エッセイ
2024.12.24
2024.12.27

「猫の種類は数あれど」メインクーン編 

モフモフ好きを魅了する猫

「猫の魅力って何だと思う?」

猫好きさんにそう訊ねたら、きっと「存在そのもの」と言われるでしょう。猫は猫であるだけで、そのすべてが魅力なのだと。

とはいえ、具体的に挙げていくなら。例えば、気まぐれで自立心に満ちた性格。甘えるモードのときの仕草や鳴き声。気品あふれるしなやかな体つき。

そして柔らかな毛並みも、多くの票を集めることでしょう。中でも長毛種のフワフワな毛並み! そのお腹やしっぽに頬ずりしたいと思った人は多いのでは。

そんなモフモフ好きを魅了する猫種のひとつが、長毛種のメインクーン。アニコムホールディングスの「家庭どうぶつ白書」によれば、10年以上も人気トップ10に入り続けている猫種です。

世界最大! ギネス世界記録も

北米の寒さに耐えられる豊かな被毛、ヤマネコを思わせる野性的な風貌と存在感。フサフサのしっぽは胴体と同じくらい長く、胸回りの毛もたっぷりとしていて、モフモフ好きにはたまらない猫・メインクーン。

彼らの平均体重は、オスが6~9kg、メスが4~6kgで、10kgを超える個体もいるほど。古くから日本で暮らしてきた和猫たちは3~4kgほどですから、倍ほどもあることがわかります。

それもそのはず、ギネス世界記録で「存命中のもっとも長い飼い猫」に認定されているのは、イタリアで暮らすメインクーンのバリベルくん。2018年の計測時に2歳だった彼の長さは、なんと120cm!

さらに「歴代でもっとも長い飼い猫」もメインクーン。2013年に亡くなったステューイーくんというメインクーンで、123cmという記録を持っているのです。しかも一時は「もっとも長いしっぽを持つ飼い猫」でもありました。

ちなみにギネス世界記録は、かつては動物の大きさの基準として「重さ」を重視していましたが、現在では「高さ」「長さ」で認定するようになっています。

ゆっくりじっくり大人になる

多くの猫は1~2歳で成猫となりますが、がっしりした骨格と筋肉質な身体を持つメインクーンは、3~5歳頃までかけてゆっくりと成長していきます。

意外かもしれませんが、メインクーンはネズミ捕りとして活躍していた「ワーキングキャット」。人間たちの頼れる相棒として暮らしてきました。

北米の厳しい環境でたくましく働いてきた猫ですから、がっしりした骨格を持ち、四肢の筋肉はしっかり発達しています。

胸の幅も広く、全身のどこをとっても、ひ弱さを感じさせるところがありません。顔の輪郭は縦長で、獲物を逃がさない頑丈なあごを持っています。

大型長毛種の仲間との見分け方

さてボリューミーな被毛を持つ大型の猫種は、メインクーンだけではありません。北欧原産のノルウェイジャンフォレストキャットや、東ロシア原産のサイベリアンは、体重や体長も同じくらい大きい長毛種です。

特にノルウェイジャンフォレストキャットは、メインクーンと同じくらい人気の猫種。人気猫種ランキングでも、長年負けず劣らずの順位を誇っています。

そんなノルウェイジャンフォレストキャットとメインクーンの違いは、ずばり横顔。メインクーンを横から見ると、鼻筋に「ジェントルカーブ」と呼ばれる、緩やかで流線的な窪みがあります。ノルウェイジャンフォレストキャットの鼻筋は一直線。スッと通った鼻筋を持っているので、見比べるとずいぶん違うことがわかります。

またモフモフの被毛にも、それぞれの猫種の個性が。メインクーンは毛の長さが不揃いで光沢のある「シャギーコート」で、意外にもシングルコート(上毛だけ)。ノルウェイジャンフォレストキャットはダブルコート(上毛と下毛の二重構造)。サイベリアンもダブルコートで、中にはトリプルコートの子もいます。

野性味を生むチャームポイント

顔の形や被毛のほかに挙げられるメインクーンの特徴のひとつが「リンクスティップ(lynx tips)」。耳の先端から上に向かってピンと生えている飾り毛のことで、耳の中から生えている毛は「タフト」と呼ばれます。

“リンクス(lynx)”とはオオヤマネコのこと。オオヤマネコ(ユーラシアオオヤマネコ)だけでなく、カナダオオヤマネコやボブキャットといったオオヤマネコ属の仲間たちをリンクスと呼ぶそうです。メインクーンの持つヤマネコのような野性味を強調するチャームポイントですね。

野性のヤマネコたちのリンクスティップが発達したのは、狩りのためと考えられています。毛先から伝わる感覚で、わずかな風の動きや音を捉えることができ、小さな獲物も逃さずに捕まえることができるのです。

また、厳しい寒さの中を生き抜いてきたメインクーンは、肉球の間にも毛が生えています。雪の上でも滑らず、体の熱が逃げるのを防ぎ、足を守るクッションにもなるこの足裏の毛も「タフト」と呼ばれています。

謎に包まれた誕生の歴史

メインクーンが生まれたのは北アメリカと言われていますが、誕生にまつわる正確な記録は残っていません。一般的にはアメリカの最北東部に位置するメイン州で誕生したと言われており、メイン州の公式猫とされています。

有力な説としては、北欧の猫がバイキングに連れられて、または交易によってアメリカ大陸に渡り、現地にいた猫と交わって生まれたというものがあります。ノルウェイジャンフォレストキャットとよく似ていることからも、納得感がありますよね。

他にユニークな説として、アライグマと猫が交わって生まれたという説があります。アライグマを思わせる立派なしっぽと、「メイン州のアライグマ(ラクーン)=メインクーン」という名前から生まれた説でしょう。もちろん生物学的には不可能ですが、広く信じられていたようです。

また、フランス革命中にマリー・アントワネットが亡命を計画し、アメリカへと送った飼い猫たちが先祖という説もあります。メイン州を含むニューイングランド地方は、アメリカ合衆国の中でも歴史の古い地域ですから、こんなロマンチックな伝説が生まれたのですね。

古くから愛されている猫種である証拠に、1895年にはマディソンスクエアガーデンでのキャットショーで受賞。20世紀に入ってからは海外から輸入された猫種に人気を奪われた時期もありましたが、現在では再びアメリカのみならず世界中で人気を博しています。

まるでワンコ? 水遊びも大好き

このように長らく人々に愛され、ワーキングキャットとしてたくましく働いてきたメインクーンの多くは、人懐っこくて優しく、大らかな性格。ペットとして飼いやすく、初心者に向いている猫種とよく評されています。

穏やかな性格ですが、ワーキングキャットらしく、活発で遊び好きな猫でもあります。とても賢いので、犬のように投げたおもちゃを取ってくる遊びもできるほど。また多くの猫は水が苦手なものですが、メインクーンは水を弾きやすい被毛を持っているので平気な子が多く、中には水遊びを好む子もいます。

もうひとつ、メインクーンの珍しい特徴としては、前足を器用に使える子が多いということ。前足を使って水をすくって飲んだり、フードをつかんで食べたり。勝手にケージやドアを開けてしまうこともあるので、いたずらや脱走には注意が必要ですよ。

体が大きく遊び好きなので、たくさん遊んであげたり大型のキャットタワーを用意したりと、運動量の確保も注意したいポイント。また賢いので人が嫌がることも覚えているらしく、ストレスを溜めると八つ当たりをすることも。大きな体を維持するために、食費も他の猫よりかかります。

ですが、基本的にはフレンドリーで環境の変化にも柔軟に対応できるので、子どもや他のペットが暮らしている家庭でも飼いやすいと言われています。穏やかで賢いメインクーンは、きっと素敵な家族の一員になってくれるはずですよ。

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