「猫の種類は数あれど」エキゾチックショートヘア編

まんまるの顔に、つぶらな瞳。そして特徴的な、ぺちゃっとした鼻。への字口がちょっと不機嫌そうにも見えるのに、ファニーで個性的な顔から目が離せない――。そんなぶさかわ顔のエキゾチックショートヘア(エキゾ)は、近年じわじわ人気を集めている猫種です。
InstagramやTikTokをはじめ、さまざまなSNSや投稿サイトでも、そのユーモラスな風貌でたびたびバズっているエキゾチックショートヘア。外見とはちょっとギャップのある、おっとりしていて甘えん坊な性格をしているところも、人々を惹きつけているようです。
このコラムでは、エキゾチックショートヘアの外見・性格、ルーツ、飼うときのポイントなどをギュギュっとご紹介。外見だけではない唯一無二の魅力を、ぜひ知っていってくださいね。
ひと目見たら忘れられないぺちゃ顔&ずんぐりボディ

「短毛のペルシャ」という異名のとおり、エキゾチックショートヘアの外見はペルシャによく似ています。
大きさは3~6kg。中~大型のがっしりとした筋肉質な身体に、短くて力強い足を持っていて、全体としてはずんぐりむっくりとした印象。しっぽも太くて短めです。
頭も全体的に大きめで丸っこく、耳が左右に離れているのもペルシャ由来の特徴。ビー玉のように大きく丸い瞳は、耳と同じく左右に離れ気味で、色はカッパーやオレンジ系が多めです。
被毛は短毛のダブルコートで、毛色は多種多様。ブラック、ホワイト、クリーム、ブルーの単色やバイカラー(ホワイト×ほかの色)、三毛、各色のタビー(しま模様)も。まれに長毛の子が生まれることもあります。
そして最大の特徴は、なんといってもぺちゃっと低い鼻! 鼻の低さによって2タイプがあり、「トラディショナル」「エクストリーム」と呼ばれています。「トラディショナル」タイプは伝統的な顔立ちで、目より鼻のほうが下。鼻ぺちゃをより追及して生まれた「エクストリーム」タイプは、目と鼻がほぼ同じ高さです。
不機嫌そうと思いきや、甘えん坊というギャップ

ぺちゃ顔でへの字口なので、どことなくムスッと不機嫌そうに見える、エキゾチックショートヘア。ですが、実はとってもフレンドリーで、誰とでも仲良くなれる猫なのです。
ペルシャゆずりのおっとりした性格で、攻撃性はかなり低め。大人しくて愛情深く、走り回ったりして激しく遊ぶことも少ないので、小さい子やお年寄りがいる家庭や、マンションでの飼育にも向いていると言われています。
温厚で平和主義な性格なので、ほかの猫やペットとも仲良くできるはず……なのですが、飼い主さんが大好きすぎるあまり、ヤキモチ焼きな一面も。寂しがり屋でもあるので、多頭飼いを考えているなら猫同士の相性を重視して。コミュニケーションをたっぷり取るように心掛け、メンタルケアしてあげる必要がありそうです。
「怠け者のペルシャ」という異名のワケ

エキゾチックショートヘアは比較的新しく、1960年代ごろに生まれた猫種。アメリカで、ペルシャとアメリカンショートヘアなどとの交配によって生まれたと言われています。
昔から優雅な姿が愛されてきたペルシャですが、その美しい長毛ゆえに、やはりお手入れは大変。そこで「短毛でお手入れが楽なペルシャがほしい!」というニーズが生まれ、エキゾチックショートヘアが誕生しました。それゆえ「怠け者のペルシャ」という異名も。
アメリカンショートヘアの影響か、最初のころはシルバーの毛色が多かったため「スターリング」と呼ばれ、1960年代にアメリカで「CFA(キャットファンシャーズ協会)」に登録。その後、さまざまな毛色が生まれたことから、「エキゾチックショートヘア」と名前が変更され、1970年代以降は世界中に広まりました。
この「エキゾチックショートヘア」という名前ですが、「ショートヘア」はその言葉の通り、短毛という意味。「エキゾチック(異国風)」のほうは、特徴的な顔立ちが異国風な印象であることからついたと言われています。
“猫の王様”ペルシャの意外なルーツ

ちなみにエキゾチックショートヘアの元となった“猫の王様”ペルシャは、世界中でももっとも古い猫種のひとつ。正確な起源は不明ですが、1500年ごろの文献にはペルシャについて記述されているそうです。1500年前後といえば、日本では戦国時代ですから、驚きですね。
ペルシャという名前は、ペルシア帝国(現在のイラン)から交易品としてヨーロッパに運ばれたことからつけられたようです。その美しい毛並みと穏やかな性格で、ヨーロッパ各地の王侯貴族たちから愛され、19世紀にはイギリスのキャットショーで注目を集めたという記録も残っています。
エキゾチックショートヘア以外に、ヒマラヤンやミヌエットもペルシャをルーツとする猫種。このほかにも、長毛や温厚な気質が求められ、さまざまな猫種の誕生に一役買っています。
毎日ちょっとずつのケア&運動を

鼻ぺちゃ顔は、エキゾチックショートヘアのチャームポイント。ですが、鼻涙管(涙の出口)が狭くなる傾向があるので、目から涙が溢れて周囲が濡れたままになることが多くなります。そのままにしてしまうと、目の周りに炎症が起きたり、目やにが増えたりすることも。ガーゼなどで優しくふき取るようにしましょう。
また短毛とはいえ、ペルシャをルーツとするエキゾチックショートヘアの被毛は、1本1本が細くて密集しているダブルコート。美しさを保つために、毎日のブラッシングは欠かせません。大人しい性格ですから、ブラッシングを嫌がることは少ないはずですよ。
ペルシャは性格的に運動不足になりやすく、肥満に気をつけたほうがいい猫種。足が短くジャンプは得意ではないので、上下運動よりも広いスペースを用意して、飼い主さんが遊んであげることが重要です。
ペルシャよりは活発と言われるエキゾチックショートヘアですが、やはり積極的に一緒に遊んで、体を動かす機会を作ってくださいね。
鼻ぺちゃさんの宿命!気をつけたい体のこと

鼻ぺちゃさんに多い病気の代表が、短頭種気道症候群。短頭種の先天的な構造(鼻の穴が狭かったり、喉の奥の軟口蓋が長かったり)によって、気道に圧力がかかりやすく、呼吸に負担がかかります。激しい運動や暑い環境ではさらに負担が重くなり、重症化すると呼吸が困難になることも。呼吸音やいびきが気になる場合などは、早めに動物病院で相談しましょう。
肥満も呼吸器への負担を増しますので、体重管理も重要なポイント。熱中症にも要注意です。
また、多発性のう胞腎は猫の代表的な遺伝性疾患。ペルシャの血統であるエキゾチックショートヘアは、発症リスクが高いと言われています。
多発性のう胞腎とは、腎臓に多数ののう胞(液体がたまった袋状のもの)ができ、腎機能を徐々に低下させる遺伝性の病気です。主な症状は多飲多尿、食欲不振、嘔吐などですが、初期は無症状のことも。早期発見が大切なので、こまめに定期検診を受けるようにしましょう。
“かわいい”だけじゃない、エキゾと暮らす幸せ

見た目のインパクトやSNSでの人気から注目されがちなエキゾチックショートヘアですが、その魅力は外見だけにとどまりません。穏やかで愛情深く、人と一緒にいることを心から楽しむ性格は、家族になったらじんわりと心を温めてくれること、間違いなし。
もちろん、涙やけのお手入れや、短頭種ならではの健康面の注意など、気をつけるべきことはあります。けれど、その手間さえ「うちの子だから」と笑って受け止めたくなる、不思議な魅力を持っているのがエキゾチックショートヘア。その見た目や性格にピンと来るものがあったなら、ぜひこの名前を心に留めておいてくださいね。
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