「猫の種類は数あれど」ブリティッシュショートヘア編
シマリスのような頬と、にっこり笑っているような口元。丸みのある、ぽってりした体。
ブリティッシュショートヘアは、その愛らしい表情で人気の高い、イギリス原産の猫種です。最近の猫種ランキングで、アメリカンショートヘアやノルウェイジャンフォレストキャットと並ぶ、人気のある猫種ですね。
もっとも古い猫種のひとつであり、あの人気キャラクターのモデルとも言われる、トラディショナルな猫・ブリティッシュショートヘア。その魅力を紐解いてみましょう。
ビロードのような毛並みと、バリエーション豊かな毛色

筋肉質でがっしりした体格のブリティッシュショートヘアは、中型~大型に分類されます。四肢や首は太く短めで、しっぽも太め。全体的に力強い丸みを持ち、抱っこするとずっしりとした存在感がある猫種です。
短毛のシングルコートながら、密度が非常に高く、まるでベルベッドのようななめらかさ。交配によって様々な毛色&柄がありますが、もっともスタンダードな色は、青みがかったグレー=ブルー。初期のブリティッシュショートヘアはこの毛色のみだったため、「ブリティッシュブルー」という猫種名で呼ばれていました。
短毛種ではありますが、被毛が密集しているので、毎日のブラッシングは必須。こまめなブラッシングで、上質な毛並みを維持してあげたいですね。
丸い目、ぷっくり頬、小さな耳――全部まんまる!

そしてやはり印象的なのは、全体もパーツも丸っこい顔立ち! 目が大きくて丸く、両目の間隔が広いため、キョトンとした表情にも見えて愛らしさ抜群。目の色も被毛同様にバリエーション豊富で、オレンジ、ゴールド、ヘーゼル、グリーン、ブルーなど、様々な色があります。
頬はシマリスのようにふっくら、ウィスカーパッド(ひげ袋)もぷっくり。これによって口元がいつもにっこり微笑んでいるように見えるのですね。耳は丸みがあって小さめなので、丸く大きめな頭全体の印象を打ち消すことなく、全体として“まんまる”に。
親近感の湧くぽってりした外見は、ブリティッシュショートヘアの大きな魅力です。
甘えんぼうな子猫から、独立心の強い大人猫へ

ブリティッシュショートヘアは、その見た目の通り、性格もおおらかでのんびり。穏やかで愛情深く、子猫のうちは甘えんぼうです。成長するにつれて独立心が強くなり、マイペースでのんびり過ごすことを好むように。フレンドリーさは残しつつ、構いすぎるとふいっと距離を取る猫らしさも出てきます。
また飼い主に忠実で賢いので、しつけをしやすい猫種でもあります。トイレの場所や入ってはいけない場所も、教えればすぐに覚えてくれる子が多い傾向。テレビや映画に出演する子が多いのは、この賢さゆえでしょう。
もともとネズミ捕りとして飼われていたので、狩猟能力は高め。筋肉質な体格からも、その能力が伺えます。ただ、若い頃はおもちゃでよく遊びますが、年齢を重ねるごとに静かに過ごすように。体質的に太りやすいので、一緒に遊ぶ時間を意識的に作ったほうが良さそうです。
猫にも血液型がある?ブリティッシュの意外な傾向

ところで、猫にも血液型があることをご存知でしょうか?
猫の血液型はA型、B型、AB型の3種類があり、AB型はごくまれ。さらに、A型とB型ではA型のほうが強いため、自然とA型の猫が多くなり、一説によれば日本の猫は9割がA型。輸血の際は、同じ血液型同士でないと副反応が出てしまいます。
そんな中でブリティッシュショートヘアは、猫の中では珍しいB型が多い猫種。ブリティッシュショートヘア全体の4割ほどがB型と言われています。
“笑う猫”といえばやはりチェシャ猫!

ブリティッシュショートヘアは「不思議の国のアリス」に登場する“チェシャ猫”のモデルと言われています。
「不思議の国のアリス」の作者ルイス・キャロルは、生まれ育ったチェシャー地方にまつわる「チェシャ猫のようにニヤニヤ笑う(grin like a Cheshire cat)」という慣用表現から、この奇妙でユーモラスなキャラクターを生み出しました。
ちなみに、あの印象的なピンク×すみれ色のチェシャ猫は、1951年公開のアニメーション映画『ふしぎの国のアリス』オリジナルのカラーリング。原作のチェシャ猫は茶トラ柄なんですよ。
2000年の歴史をもつ、イギリス伝統の猫

“ブリティッシュ”という名前の通り、ブリティッシュショートヘアはイギリス原産。この猫種のルーツは約2000年前までさかのぼります。当時イギリスに侵攻した古代ローマ軍が、ネズミ捕りのために持ち込んだ猫が祖先と考えられているのです。
その後、19世紀まで長らくイギリス島内で家庭の守り手として飼われてきた、ブリティッシュショートヘア。1871年にロンドンで開催された世界初のキャットショーで多くの賞を受賞し、その後猫種として公認されました。
20世紀に入ってからはペルシャとの交配も行われ、長毛のタイプも誕生。こちらは「ブリティッシュロングヘア」という猫種となっています。
また、アメリカンショートヘアのルーツも、ブリティッシュショートヘア。17世紀、イギリスから北米へ渡った人々によって運ばれ、アメリカで開拓者たちの頼もしい相棒として、アメリカ大陸に広がっていきました。
丈夫だけど注意も必要。気をつけたい病気は?

比較的長寿と言われているブリティッシュショートヘアは、体も丈夫な傾向です。しかし他の猫種と同じように、高齢期になれば心臓や腎臓の病気に注意が必要になってきます。
ブリティッシュショートヘアがなりやすいと言われているのが、肥大型心筋症。心臓の筋肉が厚くなって心臓の部屋が狭くなり、十分な血液を全身に送れなくなる病気です。遺伝的な要因もあると言われていますが、発症する原因ははっきりとわかっていません。初期症状がほとんどなく、突然死を招くこともある病気。定期的な検診を受けて、早期発見することが大切です。
体内のミネラル成分が結石を作る尿石症も、ブリティッシュショートヘアに多い病気。日々の水分量や食事、体質など、複数の要因が関係していると考えられています。頻尿や血尿だけでなく、結石が尿道に詰まってしまうこともあるので、毎日きちんと水分を摂らせるようにしましょう。
多発性のう胞腎は、腎臓に液体がたまった袋(のう胞)ができて、腎臓の働きが低下していく病気です。遺伝的に見られることが多い病気で、進行すると多飲多尿、食欲不振、嘔吐などの症状が見られるようになります。こちらも早期発見のためには、こまめな定期検診が有効です。
また大人になると運動量が減ることに加え、体質的に肥満になりやすい傾向があるので、食事管理や体重管理をしっかり行いましょう。
あなたも気づいたら、ぽってり魅力のとりこに

地元イギリスで多くの人々に愛され続けている、ブリティッシュショートヘア。「ぽってり」「ずんぐりむっくり」と形容されるずっしりとした体型に、愛嬌のあるまるっこい顔立ちは、独自の魅力に溢れています。
飼い主に忠実だけど、構われすぎるのは苦手。家族のそばで過ごすのは好きだけど、行動はとことんマイペース。そんな“これぞ猫!”と言いたくなる性格と、あのまんまるな微笑みに、あなたの心も釘付けになるかもしれませんね。
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