保護猫ってどんな猫?
2025.05.09
2025.05.09

ペットショップの売れ残りで殺処分はなぜ起こる?私たちに今できることを解説

ペットショップでの売れ残りが起こる仕組みや、子猫・子犬の短い売れどき、衝動買いのリスクを解説します。

売れ残りの動物たちが抱える問題や、過剰繁殖・保健所引き取りの現実、飼育責任や社会の課題に目を向け、命を守る道を一緒に考えましょう。

目次

ペットショップで売れ残りが起こる理由とは?

ペットショップには、かわいらしい子猫や子犬が並んでおり、一見するととても幸せな空間に見えます。しかし、その裏側では「売れ残り」として扱われてしまう動物たちが存在しています。

大きな要因の1つは、ペットショップがビジネスとして動物を仕入れ、限られた期間に集中して販売を行う構造にあるといわれています。子猫や子犬は幼いほど見た目が愛らしく、販売価格も高く設定されるため、短期間で売り切れれば大きな利益が得られます。しかし、購入希望者がつかないまま時期を逃すと「在庫」として残ってしまうのです。

さらに、人気種をまとめて仕入れるケースも多く、需要と供給のバランスを見誤ることで、売れ残りが増えるリスクが高まります。衝動買いをしやすい売り方も問題視されており、飼い主側の準備不足や軽い気持ちから、結局は飼い切れなくなることも少なくありません。

売れ残った動物たちが抱える問題は「すでに売れどきが過ぎている」「必要とされる飼育環境のコストが増す」など、複合的な事情が絡み合う点にあります。特にショーケースに長く展示されると、体調を崩す・心身にストレスを抱えるなど、動物にとって大きな負担となることがあります。こうした背景を知ることで、ペットショップで動物を家族に迎える際には、慎重な判断と責任が求められることを再認識いただければと思います。

ペットショップで売れ残った動物はどうなるのか?

ペットショップで売れ残った動物たちは、最終的にどのような運命を辿るのでしょうか。店頭で可愛らしく展示される動物たちの裏側で、実際に起きている現状について解説します。

値下げされて販売される

まず多くのペットショップでは、売れ残った動物に対して価格を下げて販売を続けます。生後2ヵ月頃が最も高値で売れるため、それを過ぎた動物は値引きされ、特売や割引という形で再販されることがあります。ただ、値下げされたからといって必ずしも新しい飼い主に出会えるわけではありません。

他の店舗や繁殖業者へ引き取られる

値下げしても売れ残った場合には、別のペットショップや繁殖業者に引き取られることがあります。別の店舗で再度販売チャンスを得たり、繁殖用としてブリーダーに戻されたりします。

しかし、繁殖用に戻された場合には、過酷な環境で何度も繰り返し出産をさせられる可能性があり、動物にとっては身体的にも精神的にも負担が大きくなります。

動物愛護団体に引き取られる

最近では動物愛護団体と協力して、売れ残った動物を新しい飼い主さんへとつなぐペットショップも増えています。こうした店舗では、売れ残りが出た際に動物愛護団体に引き取りを依頼し、譲渡会などを通じて新たな飼い主を見つける努力をしています。

ただ、団体側も保護できる動物の数に限界があり、売れ残った動物を全て救えるわけではありません。

殺処分となることも

一部の店舗や繁殖業者で売れ残った動物は保健所に持ち込まれ、殺処分の対象になるという悲しい過去がありました。令和元年の動物愛護法改正により、動物取扱業者からの動物の引き取りを自治体は拒否できるようになったため、ペットショップの売れ残りがそのまま殺処分される事態はなくなったと考えられます。

ただし、飼育スペースや費用の問題で飼い続けることが難しくなり、商品としての価値がないと判断された動物は、『引き取り屋』と呼ばれる業者へ引き渡されているとも言われています。『引き取り屋』では、閉じ込め飼育など不適切な飼育も問題視されており、その様子は生き地獄ともいわれるほどです。

このような行為は社会的にも倫理的にも強く批判されていますが、実際にはまだ完全になくなっていない現状があります。

【関連記事】【今すぐできる】猫や犬の殺処分を減らすために私たちができることは?殺処分の原因も解説 | ジャーナル | ピースニャンコ

日本と海外のペットショップに関する規制とは?

日本のペットショップでは、生体販売に対する法律や規制が整備されつつありますが、海外と比べるとまだあまい面があると指摘されています。

たとえば、動物愛護法によって深夜販売が制限されたものの、日本では幼い動物を店頭で展示販売すること自体は禁止されていないため、生体を販売するペットショップが全国に多数存在し、飼い主となる人々が直接猫や犬を選んで購入するスタイルが当たり前になっています。この構造が、日本における売れ残りや殺処分の問題を長引かせているともいわれます。

一方、海外では動物の展示販売を禁止している国もあります。保護施設からの譲渡が一般的な文化として根付いている国も多く、ショップでの衝動買いを防ぐ仕組みが整えられています。

同じ地球上でも、国ごとに動物との接し方や価値観が異なることを再認識すると同時に、私たちは「ペットを商品ではなく命として捉える」意識改革を求められているのではないでしょうか。

海外では生体販売を厳しく制限している理由を理解する

欧米諸国の一部では、ペットショップでの猫犬販売を禁止し、保護動物のみを扱う店舗が増えています。これは、ブリーダーが管理できる範囲以上に動物を増やさないための仕組みづくりでもあり、過剰繁殖を抑え、売れ残りが生じにくい環境を実現しようという狙いがあります。

こうした取り組みの背景には、「ペットを家族として迎えるなら、保護動物を引き取ることが自然だ」という考え方が広く浸透している点があります。つまり、動物を命として尊重する文化が根付いていると言えます。

その結果、大量生産や大量廃棄のような構造に歯止めがかかり、殺処分の数も減少へと向かった事例があるのです。海外の事例を知ると、私たちがペットショップで動物を迎えることの意味をあらためて考えさせられます。

日本の法整備に求められる強化ポイントを考える

日本でも動物愛護法により、ペットショップの営業形態や動物の飼育環境に関する各種基準は定められています。しかし、問題が起きても厳格に取り締まることが難しい場合があるともいわれています。特に、貴重な子犬、子猫の社会化期をどのような環境で過ごさせるのかなど、具体的な規制は海外に比べて緩く、早すぎる展示や販売が横行しがちです。

また、ペットショップやブリーダーの許認可制度をより厳しくすれば、不衛生な環境や誤った繁殖を防げる可能性もあります。たとえば、自治体による事前告知無しの店舗、繁殖施設への立ち入り検査を導入することで、悪質な業者による営業を抑制できるかもしれません。

このように海外の事例を参考にして、法整備や社会の意識向上が進めば、ペットを取り巻く環境は少しずつ良い方向に変わっていくのではないでしょうか。

譲渡制度を利用するメリット

ペットを家族として迎えたいと思ったとき、ペットショップでの購入だけが選択肢ではありません。保護団体やシェルターから家族に迎える方法も、最近では少しずつ認知が広がっています。最大のメリットは、危機的状況にある動物たちを救える可能性が高まる点と、衝動買いのリスクを抑えられる点です。

保護団体では、譲渡前に面談や飼育環境のチェックを行うため、飼い主の覚悟や知識の度合いを確認します。お互いが納得したうえで新たな家族として迎えられるので、長期的に見ると飼い主と動物の双方にとってメリットの大きい仕組みと言えるでしょう。

さらに、保護団体には成猫や成犬も多く、性格がある程度わかっているケースが多いため、自分のライフスタイルや住環境に合った猫犬を探しやすい面もあります。これは衝動買いとは異なり、「本当に自分に合う家族を探す」ことが叶えやすいのです。

ペットショップで目当ての猫や犬がいなかったとして「それでもすぐ欲しい」と妥協すると、飼育放棄につながりやすくなります。こうした失敗を避けるためにも、譲渡制度という選択肢があることを知っていただきたいと思います。

殺処分を減らす取り組みに直接参加できる

保護動物の新しい家族になることは、殺処分寸前の動物に居場所を与えることと同義です。保護団体やシェルターでは、行き場のない動物たちが最後の希望をもって待っていることが多く、自分が1頭を引き取れば、その猫犬がいたスペースに新たな保護対象を受け入れることが可能になるというメリットもあります。

実際に保護猫・保護犬を引き取ってみると、最初は警戒心が強くても少しずつ慣れ、名前を呼ぶと寄ってくるようになるなど、かけがえのない喜びを得られます。こうした体験を通じて「動物と暮らすことは責任と愛情の両立が重要なのだ」と実感するでしょう。

さらに、シェルターの譲渡会などの活動に参加することは、他の保護猫・保護犬の現状を知り、社会全体が抱える課題に目を向けるきっかけにもなります。

費用が比較的抑えられることもある

譲渡制度を利用する場合、ペットショップで購入するよりも費用を抑えられるケースが多いと言われます。ワクチン接種や避妊・去勢手術などの実費を負担する必要がありますが、飼い始めの初期費用が大幅に減らせます。また、保護団体側で事前に健康状態を確認している場合も多く、飼い始めてすぐに予想外の医療費が発生するリスクも低いといえます。

ただし、譲渡条件として定期的な健康診断やしつけ教室への参加を求められることもあるため、事前に確認しておくことが大切です。費用面よりも、動物が新しい環境に慣れるまで時間と手間を惜しまない姿勢が重要になります。譲渡制度は「安く済ませる手段」ではなく、保護活動の一環として協力するという認識を持って利用するのが理想です。

譲渡制度を利用するデメリット

譲渡制度には多くのメリットがある一方で、あまり知られていないデメリットも存在します。たとえば、「この子を引き取りたい」と願っても、保護団体の譲渡条件に合わなければ断られてしまう場合があります。

審査が厳しいと感じるかもしれませんが、これは不幸な飼育放棄や多頭飼育崩壊を防ぐために必要な仕組みでもあります。猫や犬が好きな人にとっては心苦しい場合もありますが、長い目で見れば飼い主と動物の双方にとって得策といえるでしょう。

また、動物たちが保護されていた環境や過去が不明なことが多く、人馴れや病歴、性格などにばらつきがあることも多いです。飼い始めた後に思いがけない病気や行動面の問題が発覚する可能性は、ペットショップから迎えるのと同様に存在します。

しかし、一度家族として迎え入れた以上は責任をもって対処し、長い人生をともに歩む覚悟が求められます。譲渡制度は動物の命を救う大きな手段ですが、メリットだけでなくデメリットもきちんと理解して選択することが大切です。

性格や健康状態が不明な場合がある

譲渡制度で引き取った動物のなかには、保護される以前の生活環境がまったくわからない子も少なくありません。たとえば、どのような食事をしていたのか、過去にどのような病気を患ったのか、年齢さえ正確にわからないケースもあるのです。そのため、病気の予防接種やフード選び、しつけの方法などを模索しながら進める必要があります。

実際に迎え入れてから、原因不明の体調不良やトイレトレーニングの難航など、予想外の問題が起こる可能性もあります。それでも、そうした苦労を乗り越えて絆を深める体験こそが、保護動物を迎える醍醐味とも言えます。

重要なのは、不測の事態が起きたときにすぐ動物病院や専門家の力を借りるなど、家族としてしっかりサポートしてあげる体制を整えることです。

譲渡の審査基準が厳しいケースがある

譲渡制度を利用するとき、保護団体によっては非常に厳しい審査基準を設けていることがあります。たとえば、家族構成や住居の広さ、経済状況、飼育経験の有無など、細かくチェックされる場合があるのです。一見すると「選びすぎでは?」と思われるかもしれませんが、再び飼育放棄や動物たちにとって不適切な環境になってしまうことを防ぐための配慮に基づいています。

また、譲渡までの流れが長引いたり、書類や面談の段階で合格できずに断られたりすることも珍しくありません。それでも、そこで諦めずに飼育環境を改善する努力をするなど、保護動物を受け入れるための準備を進めることが大切です。なぜなら、保護動物を迎えることは、「これから先ずっと家族として暮らす覚悟があるか」を問われることでもあるからです。

ペットショップで売れ残る動物を生まないためには?

ペットショップで売れ残る動物を減らすためには、社会全体が生体販売のあり方を見直すことが急務です。法整備や業界の自主規制だけでなく、私たち一人ひとりが「ペットショップに行く前に、ほかの選択肢を検討する」という意識を持つことも大切だといえます。

たとえば、譲渡制度を選ぶことで殺処分を回避できる動物が増えるほか、ショップでの売れ残りを減らす流れをつくることもできます。さらに、飼う前にしっかり家族と話し合い、終生飼育ができるのかを慎重に考えるステップも重要と言えるでしょう。

衝動買いを避けるには、「今すぐ手を出す」のではなく、十分な情報収集や準備期間を設けることが効果的です。飼育費用はどの程度必要か、将来的に生活スタイルが変わっても責任を持てるか、自分自身や家族の体調はどうかなどをあらかじめ確認しておくことで、軽率な購入を防ぎやすくなります。こうした行動の積み重ねが、売れ残りが生まれない仕組みを育むうえで欠かせない一歩になるでしょう。

【関連記事】猫の殺処分数はどれくらい?現状と殺処分を減らすための方法を解説 | ジャーナル | ピースニャンコ

法改正や規制強化を求める声を上げる

消費者の声は、法整備や行政への働きかけに大きな力を発揮します。「ペットショップでの生体販売をもう少し規制すべきだ」「幼い子犬や子猫の展示販売を制限してほしい」と感じたら、その意見をしかるべき場へ届けることが大切です。たとえば、国や自治体のパブリックコメントに参加したり、関連する議員や団体に要望を提出したりと、思いのほか身近な方法で社会を動かすこともできます。

法改正には時間と労力がかかりますが、実際に動物愛護法の改正が行われた背景を見ると、市民や動物愛護団体の声が大きなきっかけになっている例が多いのです。「自分一人の意見では何も変わらない」と諦めるのではなく、声を上げ続けることが重要です。多くの人々の意見が集まることで、ペットショップでの売れ残りや殺処分を本当に減らすための仕組みづくりが進むはずです。

保護団体や譲渡会への支援を始める

もし「猫や犬を飼うのは難しい」という状況でも、保護団体の活動を手伝うことで、間接的に殺処分を減らす支援ができます。たとえば、寄付や物資の提供、譲渡会でボランティアをする、SNSで保護動物の情報を広めるなど、小さな行動から始められるのです。

さらに、保護団体の現場を実際に見学すると、ペットショップの華やかな印象とは異なる「現実」に気づくこともできます。多頭飼育崩壊で保護された動物や、虐待を受けてきた動物たちが生きようとする姿を目の当たりにすると、自分自身の意識が大きく変わるかもしれません。そうした気づきが、今後ペットを飼う選択をするときの考え方に影響し、結果として殺処分を減らす連鎖を生み出すのではないでしょうか。

【関連記事】『保護猫』とはどんな猫?迎える準備とメリット解説 | ジャーナル | ピースニャンコ

まとめ:売れ残りを生まないためにできること

ペットショップでの売れ残りや殺処分の現実を知ることは胸を痛めるかもしれませんが、問題を直視することで「自分にもできることがあるのでは」と考えるきっかけになります。衝動買いを避け、譲渡制度や法改正を求める活動、寄付やボランティアなど一人ひとりが行動することで、社会は少しずつ変わっていくでしょう。

家族として動物を迎える前には、十分な話し合いと予算・飼育環境の整備が「売れ残り」を生まないための基本的なステップとなります。ペットショップの華やかさだけでなく、その先の現実にも目を向け、命とどう関わるかを考える機会として、一歩を踏み出すきっかけにしていただければ幸いです。

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