野良猫にトイレを覚えさせる方法は?しつけのポイントや必要な準備も解説!

野良猫を保護して家に迎えたばかりのとき、いちばん気になるのが部屋のあちこちで粗相をしてしまう事です。衛生面や家のにおいを保つことはもちろん、猫自身にとっても安心できるトイレ環境を整えるのは大切なステップと言えます。とはいえ、トイレの種類や砂の選択肢は多く、「何が正解なのか」「どう準備すればよいのか」がわからず、最初の段階で戸惑うこともあるかもしれません。
そこで、まずは野良猫のトイレしつけに取りかかる前に押さえておきたいポイントと、具体的な準備について詳しく見ていきましょう。
野良猫のトイレをしつける前に知っておきたいポイント

野良猫のトイレをしつける前に知っておきたいポイントは以下のとおりです。
- 猫のトイレ習慣が重要な理由
- 野良猫を保護したばかりの方が抱える悩みとリスク
上記のポイントを以下でそれぞれ解説します。
猫のトイレ習慣が重要な理由
室内飼いの猫にとって、トイレはただ排泄をするだけの場所ではなく、安心してくつろげる小さな空間としての意味合いを持つことがあります。特に保護したばかりの猫は、「ここなら怖い思いをしない」と思える場所で用を足せるかどうかによって、その後の生活で余計な不安を抱えずに済むかが変わってきます。
とりわけ野良猫の場合は、外で自由に排泄していた習慣からいきなり室内の限られたスペースに移行するわけですから、環境の変化だけでも大きなストレスがかかります。そこで、人間の都合だけで場所を決めるのではなく、猫が落ち着いて用を足せる、部屋の隅や人の視線が届きにくい静かな場所を用意してあげるなどの工夫が必要です。
また、トイレ習慣は衛生面においても重要な意味を持ちます。粗相によるにおいが室内に残ってしまうと、次からも同じ場所でしてしまう要因になりやすく、結果として飼い主が何度も片付けに追われることになります。最初の段階で、猫の居心地や好みに合うトイレ環境を整えることは、後々の手間や猫のストレスを軽減することにもつながります。
野良猫を保護したばかりの方が抱える悩みとリスク
保護した直後の猫は、人間に慣れていないことが多く、触ろうとすると逃げたり威嚇したりすることも珍しくありません。そうした気持ちが落ち着かない状態では、どこで排泄すればいいのかを理解する余裕がなく、思いもよらない場所で粗相をしてしまう可能性があります。
特に、マンションやアパートなどの集合住宅では、においや衛生面での苦情につながり、最悪の場合、退去を求められることも考えられます。
さらに、体調をくずしている野良猫であれば、免疫力の低下や感染症によってトイレのしつけ以前に獣医師の治療が必要になるケースもあります。十分に体調管理が行き届いていない状態でトイレトレーニングを始めても、うまく覚えられないばかりか、猫にとって過度なストレスとなる恐れがあります。
実際に飼い主が対処に困り、最終的には保護団体や動物病院に助けを求めるケースは少なくありません。猫が快適に新しい環境に慣れるためにも、しつけより先に安全を確保し、健康面をチェックしてからステップを踏んでいくことが大切です。
トイレトレーニングを始める前の準備

トイレトレーニングを始める前の準備は必要なアイテムと費用感の把握、トイレの設置場所と環境づくりが重要です。以下で詳しく解説します。
必要なアイテムと費用感
トイレを覚えさせるためには、まず猫が安心して排泄できる環境づくりが欠かせません。そのために必要となる代表的なアイテムは、猫用トイレ本体と猫砂です。
ひと口にトイレといっても、オープンタイプからドーム型、システムトイレなど、形状はさまざまです。オープンタイプなら出入りがしやすく掃除も比較的楽ですが、においや排泄物が見えやすいという面があり、ドーム型だと周りを囲っているぶん猫が落ち着きやすい反面、出入口が狭いため掃除が若干手間に感じることもあります。
猫砂は、鉱物系、紙系、おから系、シリカゲル系などバリエーションが豊富で、それぞれにおいの吸着力や処理方法、価格帯が少しずつ違います。たとえば鉱物系は固まりが良くコストパフォーマンスが優れている一方で、細かい砂が部屋に飛び散りやすい傾向があります。紙系は軽くて扱いやすく可燃ゴミとして処理できる利点がありますが、吸収力や脱臭力を求めるならシリカゲル系が向いている場合もあります。ただし、シリカゲル系は少し価格が高いと感じる方もいるでしょう。
また、トイレ本体は2,000円前後から5,000円を超えるものまで幅広く、猫砂は1袋数百円〜1,000円程度が一般的です。一度にすべてを最上級のものにそろえる必要はありませんが、猫砂は猫の好みに合わせてみるのがおすすめです。
もし使い始めて「嫌がっているかな」と感じたら、別の種類に変えてみるのもよいでしょう。飼い主さんにとっての費用感や管理・掃除のしやすさと、猫にとっての使いやすさのバランスを取りながら、理想的なトイレ環境を整えてあげることがスムーズなトイレトレーニングになります。
トイレの設置場所と環境づくり
トイレの種類と同じくらい大切なのが設置場所です。猫は本能的に「安心できる隠れ家」のような場所で用を足したいと考える傾向が強いため、人の行き来が激しいリビングの真ん中などはあまり適しません。逆に押し入れの奥などに置きすぎると、換気が悪くにおいがこもりやすくなり、猫自身がトイレに行きたがらなくなることもあります。部屋の隅で、適度に静かでありながら、掃除や換気がしやすい位置が理想的です。
また、トイレが汚れていると、多くの猫は使いたがらないことが多いため、飼い主がこまめに掃除しやすい配置にしておくことも重要です。多頭飼いであれば、それぞれの猫がトイレの奪い合いにならないよう、頭数より多めに用意するとトラブルが減るといわれています。部屋の構造によっては複数か所に分散して設置し、猫が好きなほうを選べるようにしてみるのも有効です。
粗相を防ぐには、猫が「ここが自分のトイレなんだ」と早い段階で理解しやすい環境を整えることがカギになります。初めから場所をあちこち変えず、なるべく一定の位置に置いておくこともポイントです。
もし、どうしても部屋のスペースが限られていて目につきやすい場所に置かざるを得ないときは、パーテーションやカーテンを活用して視線を遮ってあげるなど、小さな工夫でも猫はずいぶん安心感を得られます。こうした環境づくりの積み重ねが、野良猫を保護して室内飼いを始めるときに、トイレをうまく覚えてもらうための第一歩になるのです。
野良猫のトイレトレーニング4ステップ

野良猫を保護して室内で暮らせるようにする際、スムーズにトイレを覚えてもらうためには、段階的にアプローチすることがとても大切です。
保護された猫は外の世界から急に環境が変わり、不安を抱えていることも多いため、安全と安心を確保しながら少しずつ新しい生活に慣らしていくほうが失敗は少なく、猫に余計なストレスを与えずに済みます。ここでは、猫の気持ちを尊重しながら進める、4つのステップをご紹介します。
ステップ1:保護直後の安全確保と初期観察
外の環境に長く身を置いていた猫は、室内のいろいろな物音や人の動きに警戒心を抱きやすいものです。最初のうちは、広い空間を自由に行動させるよりも、ケージや小さな部屋など、ある程度行動範囲を限定できる場所に落ち着かせることが安心へつながります。
そこに猫用トイレをあらかじめ準備しておけば、たまたまでもトイレを使うきっかけができやすく、猫自身が「ここで排泄しても大丈夫だ」と少しずつ学んでいく手助けになるでしょう。もし粗相をしてしまった場合でも、狭い範囲にとどめておくことで後片付けの負担が軽減されます。
ただし、この段階では猫が警戒して隠れっぱなしになったり、まったくトイレに行かなかったりしても慌てずに、まずは落ち着いた環境をキープすることを優先してください。保護当初は、体調不良やストレスが原因で食欲が落ちる場合もあるので、排泄の頻度が下がることも珍しくありません。初日はあまりしつけを意識しすぎず、猫の様子を観察しながら、「新しい環境でも安心して過ごせる場所がある」という感覚を持ってもらうことが、次のステップへ進むための大切な土台になります。
ステップ2:トイレに慣れさせる
保護後しばらくして少し猫が落ち着いてきたら、トイレの存在をしっかりと認識させてあげるとよいでしょう。具体的には、食後や寝起きなど猫が排泄しやすいタイミングにトイレへそっと誘導し、「ここが安心して用を足せる場所なんだよ」ということをやさしく伝えてあげます。
ただし、無理やり抱っこして砂の上に乗せると逆効果になるケースもあるので、あくまで猫が自分から行けるように導いてあげるのがコツです。
万が一、粗相をしてしまったときに叱ってしまうと、猫はトイレ行為そのものを怖がってしまうことがあります。失敗しても攻めずに、粗相した場所を消臭・除菌して、トイレと結びつかないように対応することが大切です。
また、猫は意外と好みがはっきりしているため、使っている猫砂が気に入らない場合はトイレを避ける行動をとることがあります。紙系、鉱物系などいくつかの種類を試してみて、反応が良いものを見つけたら、そのまま継続して使っていくとスムーズです。こうしたトライ&エラーを繰り返すうちに、猫自身が「ここなら快適に排泄できる」と学習していき、トイレの場所を覚えることにつながります。
ステップ3:粗相が起きたときの対処法
しつけを進める過程で、どうしても粗相が起きることはあります。トイレを覚えかけていた猫でも、新しい家具が入ってきたり環境の変化があったりすると、急に別の場所で用を足すようになることがあり、飼い主は焦ってしまうかもしれません。しかし、そのようなときこそ落ち着いて原因を探り、猫に安心感を取り戻してもらうことが何より大切です。
まずは粗相をした場所を徹底的に消臭し、においの残りをできるだけ取り除いてください。においが残っていると、猫が「また同じ場所でしていいのかな」と勘違いしてしまう可能性が高まります。
次に、トイレ自体の設置場所が猫にとって使いづらいところではないか、あるいは猫砂が清潔に保たれているかなど、環境面も改めてチェックするとよいでしょう。
もし粗相が続くようなら、排尿時の痛みや不快感があるためにトイレを避けている可能性があるほか、泌尿器系の疾患などが原因となることも考えられます。泌尿器系の疾患などが原因でトイレを我慢しているケースもあり得るため、症状が疑われるときは早めに動物病院を受診することが安心につながります。
猫がしつけ中に失敗してしまっても、それをきっかけに飼い主が慌ててトイレ環境をコロコロ変えたり叱ったりすると逆効果になりやすく、あくまで冷静に状況を見極め、改善できるポイントを一つずつ修正していくことが成功の近道です。時間をかけて信頼関係を築いていきましょう。
ステップ4:習慣化のためのコツ
トイレの場所や猫砂の種類が猫に合っているとわかったら、その状態をなるべく変えずに維持しながら、猫が安心して排泄できる日常をつくってあげることが大切になります。特に、きちんとトイレを使えたときには、穏やかに声をかけたり優しく撫でたりして、『ここで排泄すれば大丈夫』という安心感を猫に与えると効果的です。
ただし、過剰におやつを与えるなどの行為は逆に混乱を招くこともあるので、ほめ方は穏やかさを意識すると猫も安心しやすくなります。
また、定期的にトイレの掃除を行い、常に清潔さを保っておくことは習慣化の重要なポイントです。猫はとてもきれい好きな動物なので、汚れたトイレは敬遠されやすく、せっかく慣れてきたトイレでも急に使わなくなるケースがあります。
飼い主からすると少し面倒に思えるかもしれませんが、こまめに掃除することで日々の様子を把握しやすくなり、猫の体調変化も早めに気づけるメリットがあります。小さな変化に気を配りながらケアしていくうちに、猫も自然にトイレを使うことが当たり前だと感じるようになり、お互いに快適な暮らしを続けやすくなるでしょう。
トイレしつけに関する疑問と回答

トイレトレーニングを進めるうちに、「本当にこのやり方で合っているのかな」「うちの猫だけなぜうまくいかないんだろう」という不安を抱える方は少なくありません。ここでは、よくある疑問点について、いくつか具体的に解説していきます。
トイレの数はどのくらい必要?
一匹の猫しか飼っていなくても、トイレは2か所以上設置すると粗相のリスクが減るといわれています。これは、猫がトイレを使いたいと思ったタイミングで、もし一つのトイレが汚れていた場合でも、もう一つの選択肢を用意しておけば迷わず排泄できるからです。
多頭飼いの場合は「頭数プラス1台」の設置が望ましいとよく言われますが、実際の住環境によってはスペース的に難しいこともあります。そんなときは、猫同士の相性や動線を見極めて、可能な範囲でトイレの数を増やしたり、配置を工夫したりすると、トイレ争いが起きにくくなります。
どれくらいの期間で覚えてくれる?
猫の性格や年齢、これまでの生活環境によって、トイレを完全に習慣化してくれるまでの期間はばらつきがあります。たとえば子猫の場合は、環境の変化を柔軟に受け入れやすい反面、体力や集中力が少ないため、最初は失敗を繰り返すこともあるでしょう。
一方で成猫の場合は、外での生活が長かったり、別のルールに慣れていたりすると、新しい環境を受け入れるまでに時間がかかることがあります。一般的には1〜2週間ほど根気よくしつけを続ければ、ほとんどの猫が正しい場所で排泄できるようになるものの、個体差は大きいので焦りは禁物です。目安としては、一度も粗相せずに数日間トイレを使い続けられたら、かなり順調に進んでいるといえます。
子猫と成猫でしつけ方法は違う?
基本的な進め方は同じでも、子猫と成猫では注意すべきポイントが若干違います。子猫は覚えが早い反面、まだ体が小さく、トイレのフチが高いタイプだと跨ぎづらくて使いにくいケースがあります。そんなときは、出入口が低いものを選んだり、段差に小さな踏み台を置いてあげると、失敗が減る傾向にあります。
成猫の場合は、すでに自分なりの習慣を持っている可能性が高く、過去に路上で排泄していた経験から「土や砂の感触にこだわる」場合があります。もし市販の猫砂を嫌がるようであれば、他社製品や別の素材に変えるなどして、焦らず調整していきましょう。
野良猫にトイレを覚えさせよう
ステップを踏んだしつけによって、少しずつ猫の表情が穏やかになり、自分からトイレを使ってくれるようになる時がやってきます。
トイレの場所を覚えるだけで、猫は外敵に怯えることのない安全な生活を手に入れ、飼い主は余計な掃除の負担やストレスを大きく軽減できるという、双方にとって大きなメリットになります。特に野良猫を保護した場合は、そこで得られる安心感が猫の健康面や人との信頼関係につながるため、じっくりと関係性を育む良いチャンスでもあります。
もし途中で行き詰まりを感じたら、動物行動学に詳しい獣医師や多くの野良猫を保護してきたボランティアさんに相談してみるのも一つの方法です。トイレのしつけとひと口にいっても、猫それぞれの性格や背景によって解決策は異なるため、専門家のアドバイスを受けることによって最短ルートが見えてくるかもしれません。
焦らず一歩ずつ進めるうちに、きっと猫は自分の居心地のいい「安全なトイレ」だと認識し、毎日をリラックスして過ごせるようになるはずです。そんな姿を見守れるのは、猫と一緒に暮らす醍醐味でもあるので、ぜひ楽しみながらトライしてみてください。
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