野良猫を保護してから慣れるまでに必要な時間は?慣れたサインや早く慣れてもらうコツを紹介

野良猫を保護するとき、最初に「うまく懐いてくれるのだろうか」という心配が頭をよぎるかもしれません。実際、飼い猫と違って外で自由に暮らしていた猫は、警戒心が強かったり人に対して臆病だったりすることが多く、環境に慣れるまでには時間がかかることがめずらしくありません。
それでも、正しい準備と段階的なケアを行うことで、保護した猫が少しずつあなたへの信頼を深め、家族の一員として穏やかに暮らせるようになる可能性は大いにあります。
これから野良猫を保護しようと考えている人、あるいはすでに保護したものの今後どう対応すればいいのか迷っている人に向けて、必要な知識とポイントを整理しました。焦らず猫のペースに合わせて接することが大切ですし、そのために知っておくべき知識をここで確認してみましょう。
保護した猫が慣れる・懐くためにかかる時間は?

野良猫を保護した直後は、猫が環境の変化に戸惑い、なかなか懐かないことがあります。かかる時間は猫の性格や年齢、過去の経験などによってさまざまで、数日から数週間ほどで慣れてくれる猫もいれば、数ヵ月以上かかるケースもめずらしくありません。
すでに人との接触経験がある猫なら比較的早く慣れる場合がありますが、外で生活してきた期間が長いほど警戒心が強く、時間が必要になることが多いものです。
焦る気持ちもありますが、保護した猫のペースに合わせてあげることが最も大切です。特に、野良猫時代に人間やほかの動物から怖い思いをした経験がある場合は、トラウマを解消しながら信頼関係を築かなければなりません。
だからこそ、「慣れるまでに時間がかかる」前提で、長期的な気持ちを持って接することが成功のカギになります。
保護した猫に慣れてもらうための4つのステップ

保護した猫が新しい環境に慣れるためのステップをご紹介します。焦らずステップ通りに猫と接することで環境に慣れてもらえます。
1. ケージでの飼育から始める
保護直後は、広い部屋にいきなり放してしまうと猫が落ち着く場所を探せず、パニックになってしまう可能性があります。
そこでケージを用意し、その中に寝床・トイレ・水と餌をセットしてあげると、安心して過ごせるコンパクトな空間ができます。ケージの中であれば逃げ回る必要もなく、人の気配に慣れやすくなるメリットがあります。最初はケージにカバーをかけるなどして視界を少し制限してあげると、周囲の環境に慣れやすくなるでしょう。
2. 少しずつ猫とコミュニケーションをとってみる
ケージ越しにゆっくりと声をかけたり、そっと手を差し出したりしながら、猫に人の存在を認識させていきます。名前を呼んだり、優しく「おはよう」「ただいま」と声をかけたりすると、猫も少しずつ飼い主の声に慣れていきます。
怖がってシャーッと威嚇する場合もあるかもしれませんが、慣れない相手に対する自然な反応なため、無理に手を近づけないことが大切です。時間をかけて「あ、この人は危険じゃないんだ」という安心感を育むのが、このステップの狙いになります。
3. ケージから出してみる
ケージの中である程度落ち着けるようになったタイミングを見計らってケージの扉を開け、自由に出入りできる状態にしておくと、自発的に外の空間に興味を示すようになります。
まだ怖がって出てこない場合は、焦らず、待つのがポイントです。ケージから出たがっているようなら、周囲に危険なものがないか、隠れる場所がちゃんとあるか、いつでもケージ内に戻れるように扉が開いているのかを確認したうえで部屋の中を少し散策させてみましょう。
4. 気ままに触れ合う
ケージから出てきた猫が部屋の中を自由に探索し始めたら、少しずつ一緒の空間で過ごす時間を増やしてみます。ただし、いきなり抱っこしたり撫でようとしたりすると驚いてしまう猫も多いので、猫が「そばにいても大丈夫」と感じてくれる距離感を保ちましょう。
猫のほうから近づいてきたり、そばにいることを嫌がらなくなったら、軽く手の甲で匂いを嗅がせたり、体の横あたりを優しく撫でたりしながら慣らしていくとスムーズです。
保護した猫が慣れるまでの時間を早めるコツ

焦らずじっくり慣れてもらう必要があることがわかっても「猫に早くリラックスしてほしい」「早く触れ合いたい」と思う方は多いと思います。ここでは、少しでも早く猫に慣れてもらうためのコツをご紹介します。
おもちゃを使う
最初は警戒心が強くても、おもちゃで遊ぶことをきっかけに心を開く猫はたくさんいます。猫じゃらしやボールなど、猫が興味を引きそうなアイテムを揺らしたり転がしたりしてみると、遊びたい欲求が強い猫は少しずつ近づいてきます。
遊びの中で「人といると楽しい」「安心できる」と感じてもらえれば、より早く信頼関係を築くきっかけになるでしょう。
猫が怖がらないよう音に気をつける
大きな物音や急な動作は、特に野良猫にとっては怖いものです。部屋のドアの開閉、掃除機などの音はなるべく穏やかに行い、猫がいる部屋に人が出入りするときも声をかけながらゆっくり動くなど、配慮を欠かさないようにしましょう。静かな環境を保つだけでも、猫の警戒心を大幅に和らげることができます。
慣れていない状況で撫でるなどの接触を無理にしない
保護猫が慣れていないうちは、撫でること自体がストレスになる場合もあります。猫は触られることを好む子ばかりではなく、慣れていないと「抱っこ=拘束される」という意識からパニックになる可能性もあります。
しっぽを振っていないか、耳が後ろに倒れていないか、体全体が固まっていないかなど、猫のボディランケージをよく観察しながらアプローチしましょう。猫が落ち着いているときに少しずつ触れ合うのがベストです。
隠れられる場所を作る
野良猫時代に身についた警戒心は、完全になくなるまでに時間が必要です。家の中でも安全だと感じられる“隠れ家”をいくつか用意しておくと、猫が安心して過ごせるスペースを確保できます。
段ボールを改造して小さな入り口を作ったり、キャットタワーのボックス部分を活用するなど、猫が気に入った場所を自分で選べる環境づくりを心がけましょう。
自分専用の落ち着ける場所があることで、家の中が恐怖の対象ではなくなるきっかけになります。
保護した猫が慣れてきたときに見せるサインは?

保護した猫が少しずつ慣れてくると行動面にいくつかの変化が見られます。ここでは、「保護した猫が新しい家や人に慣れたサイン」をリスト形式で紹介します。これらのサインが増えてきたら、猫が少しずつ安心感を得ている証拠といえるでしょう。
- 姿を見せる時間が増える
- 自分から近づいてくる
- しっぽを立ててリラックスした姿勢を見せる
- スリスリしてくる(頬や体をこすりつける)
- のびのびとグルーミングする、前でくつろぐ
- ゆっくりとしたまばたきをする(いわゆる“猫のキス”)
- 遊びに誘ってくる、積極的に反応する
- 名前を呼ぶとこちらを見たり返事をしたりする
- しっかり食べる
- トイレを上手に使う
- そばで眠る、警戒せずに寝姿を見せる
猫を保護したら慣れるまで焦らず待ってあげることが大切

野良猫を保護したとき、慣れてくれるまでの期間は猫それぞれで異なり、短い猫もいれば、長い時間を要する猫もいます。
重要なのは、相手のペースを尊重しながら「ここは安全なんだ」「人間は怖くないんだ」という感覚を少しずつ育んであげることです。ケージを使って安心できるスペースを確保し、コミュニケーションを重ねていけば、やがて猫のほうから信頼を示してくれるようになります。急がず焦らず、穏やかな環境と優しい声かけを続けていくことで、新しい家族として深い絆を育てることができるでしょう。
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