大人の野良猫を飼う方法は?手順や注意点も解説!

大人の野良猫を飼うことは、子猫を迎えるのとはまた違った魅力や注意点があります。もともと外で生活していた猫を保護するため、警戒心が強かったり生活リズムが定まっていなかったりするかもしれませんが、ゆっくりと信頼関係を築くことで落ち着いたパートナーへと変わっていく姿には大きなやりがいを感じるでしょう。
この記事では、大人の野良猫を飼う前に知っておきたい手順や利点・注意点をできるだけわかりやすく解説します。
大人の野良猫を迎える準備とステップ

外で暮らしていた猫を家族として迎えるには、思っている以上に慎重さが求められます。最初の段階で無理をしてしまうと、猫自身がストレスを感じてしまい、保護の難易度が上がることもあるからです。ここでは、保護・捕獲の方法から家の中への慣らし方まで、順を追って確認していきます。
保護・捕獲の方法
野良猫を保護する際には、まず相手の気持ちになって行動することが大切です。猫は警戒心が強く、人の姿や急な動きに敏感に反応します。いきなり捕まえようとして追いかけると、猫が逃げてしまうばかりか、後々に人を怖がるようになるかもしれません。そのため、保護には餌を少しずつ与えながら距離を縮める方法がよく使われます。
餌場を決めて、猫が安心して食事できる環境を整え、徐々に人の存在に慣れてきたら捕獲器を使うなど、段階的に接触を増やすとスムーズでしょう。捕獲器の使用に抵抗を感じるかもしれませんが、猫の安全を考えると、野良猫の保護に慣れている地域のボランティア団体や動物病院に相談して貸し出しや手伝いをしてもらうのが得策です。早い段階で協力体制を築いておくと、その後の健康チェックや家族探しなどの手続きについてもアドバイスを受けやすくなります。
室内飼いへの切り替え
捕獲に成功したら、次は屋内へと迎え入れるステップが待っています。外の世界で自由に暮らしていた猫にとって、家の中は最初見慣れない場所であり、物音や人の動きに対しても警戒心を抱きやすいものです。そこで、いきなり家全体を自由にさせるのではなく、まずはケージや限られた部屋など安全なスペースを用意し、猫が落ち着いて過ごせるようにしてあげることが大切です。
どこに行っても知らないにおいだらけで落ち着けないと、粗相や威嚇行動につながる場合もあるため、猫が自分のテリトリーだと感じられるよう、隠れやすい箱を置いたり、トイレやお水、お皿の位置を一定にしたりといった工夫をしてみましょう。生活空間に慣れてきたら、少しずつ出入りの範囲を広げることで、猫がその環境を自分のものとして受け入れやすくなります。
慣らし方とコミュニケーション
室内に落ち着かせることができたら、次は信頼関係を築いていく段階です。大人になった野良猫は、すでに人間を怖い存在として認識している可能性があります。声のかけ方や触れ方を間違えると、猫にとっては大きなストレスになってしまい、拒絶が強まってしまうこともあるでしょう。そんなときは、猫のペースを尊重しつつ、無理に近づきすぎないことが大切です。
興味を示して近づいてきたら小さな声で話しかけたり、おやつをそっと差し出したりするなど、コミュニケーションを取るヒントはたくさんあります。遊びが大好きな子であれば、羽根じゃらしやボールなどを使って適度に体を動かしてあげると、一緒の時間を共有しやすくなります。焦らずに根気よく、猫が「この人なら大丈夫」と思える瞬間を増やしていくことで、少しずつ心の距離が縮まるはずです。
大人の野良猫を飼う利点

大人の野良猫には、子猫にはない利点がたくさんあります。保護の段階でやるべきことが多いのは確かですが、それを乗り越えると、すでに成熟しているがゆえの飼いやすさが見えてくるでしょう。これから紹介する利点に目を向けると、なぜ大人の猫を選ぶ人が増えているかが分かるかもしれません。
落ち着いた性格になっているため飼育しやすい
子猫の場合は天真爛漫で可愛らしい反面、部屋中を走り回ったり、家具をひっかいたりと、やんちゃな行動が目立ちます。それに比べて大人の野良猫は、外での生活経験を積んでいるため、ある程度落ち着いた行動パターンを持ち合わせていることが多いです。生き残るために学んだ知恵が役立ち、新しい環境に対しても「観察する」というスタンスで臨み、いきなり大暴れするという事態は少ないです。
もちろんすべての猫に当てはまるわけではありませんが、基本的には子猫よりも手間がかからず穏やかに暮らせる可能性が高いでしょう。
留守番が比較的得意
社会人や学生の方、自営業など、家を空ける時間が長い人にとって、留守番ができるかどうかは非常に重要なポイントではないでしょうか。子猫だと目を離した隙に事故を起こしてしまったり、いたずらがエスカレートして帰宅後に部屋がめちゃくちゃになっていたりすることも珍しくありません。
一方、大人の野良猫は、もともと一匹で過ごす時間が長かったため、飼い主がいない間も比較的落ち着いて過ごしているケースが多く見受けられます。もちろん飼い主のにおいがする毛布や安全な隠れ場所などを用意してあげるとさらに安心できるでしょう。
トイレのしつけが簡単
室内飼いを始めるときに悩ましい問題の一つとして挙げられるのがトイレのしつけですが、大人の猫は意外にも早く覚えてくれる場合が多いです。野良猫として外で生活してきた期間が長いほど、自分が排泄をする場所を本能的にきちんと選ぶ傾向があるからです。最初は砂の感触やトイレの位置に慣れないかもしれませんが、トイレを清潔に保ちつつ、落ち着いた隅の方に置いておくだけで、自分から使うようになる例がほとんどです。
もしもうまくいかないと感じたら、トイレの形状や砂の種類を猫の好みに合わせて変えるなど、柔軟に調整してみてください。ちょっとした工夫で意外とあっさり解決することも多いものです。
先住猫や家族との相性が読みやすい
子猫は体力があり余っているため、先住猫にちょっかいを出しすぎるなど、予期せぬトラブルを引き起こすことがあります。ところが、ある程度落ち着いている大人の猫の場合は、相手との距離感を測るのがうまく、相手に威圧感を与えない行動を取ってくれるケースが多いとされます。人間に対しても同様で、子どもやお年寄りがいる家でも比較的安心して迎えられる場合が少なくありません。
そのため新しい家族との相性を見極めたいとき、大人の野良猫はその振る舞いを観察するだけでおおよその性格や行動パターンを把握しやすい点が魅力です。もちろん猫にも個体差はありますが、相性の良し悪しをある程度予測しやすいことは、暮らし始めてからのトラブルを減らす一因になるでしょう。
大人の野良猫を迎えるには、保護の段階で慎重さが求められたり、室内飼いに慣れるまでのケアに手間や時間がかかったりすることがあります。しかしそれを上回るほどの安心感や落ち着き、先住猫との相性の良さなど、多くの利点が存在します。これからの暮らしが穏やかで充実したものになるよう、ぜひ大人の野良猫をお迎えするという選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
大人の野良猫を飼う注意点

大人の野良猫を飼う際の注意点は以下のとおりです。
- ノミ・ダニなど寄生虫のリスク
- 性格面での警戒心や攻撃性の可能性
- 病気やケガの有無を最初にしっかり確認する必要性
上記の注意点を以下でそれぞれ解説します。
ノミ・ダニなど寄生虫のリスク
大人の野良猫を新しく家族に迎えるとき、まず気をつけたいのがノミやダニなどの寄生虫です。外での暮らしが長ければ長いほど、被毛の奥や皮膚にそれらの虫が潜んでいる可能性が高まります。寄生虫によっては猫自身がかゆみや皮膚炎に悩むだけでなく、家の中にも繁殖してしまい、ほかのペットや人間にまで被害が及ぶこともあるでしょう。
早めに信頼できる動物病院を受診して予防薬や駆除薬を使い、室内飼いを始める前に清潔な状態へと整えてあげることが大切です。ノミやダニだけでなく、体の内部に寄生する虫もいるため、健康診断と合わせてしっかり検査を受けることで安心して一緒に生活をスタートできます。
性格面での警戒心や攻撃性の可能性
外で生活していた大人の猫は、人間との関わりが少なかった分、警戒心が強い子も少なくありません。接し方を誤ってしまうと、威嚇や引っかき、噛みつきといった攻撃的な態度に出ることがあるため、最初のうちは猫の様子を見ながら距離を保つことが肝心です。
飼い主としては「早く仲良くなりたい」という気持ちが湧きますが、猫にとっては突然狭い場所に閉じ込められ、知らない人間と向き合う環境が大きなストレスになるかもしれません。新しい環境や飼い主に慣れるための時間は猫それぞれに違うので、声をかけるときのトーンや触れ合うタイミングには十分配慮し、猫が「ここなら安心だ」と思えるシグナルを示してくれるまで、焦らずゆっくりと環境に慣れさせていくことが大切です。
病気やケガの有無を最初にしっかり確認する必要性
大人になってから保護された野良猫は、過去の暮らしの中でケガをしていたり、感染症や慢性疾患を抱えていたりする場合があります。初期段階で健康状態を調べずに飼い始めると、後から重篤な症状が見つかって治療に時間や費用がかかることになり、飼い主も猫も大変な思いをするかもしれません。
そうならないためにも、保護後はなるべく早く動物病院へ行き、血液検査やウイルス検査を受けることが大事になります。ケガの有無や健康状態を把握しておくと、飼育環境の整備や栄養バランスの調整がしやすくなるだけでなく、後々のトラブルも防ぎやすくなります。猫が長く健康で暮らせるよう、最初のチェックは妥協せず丁寧に行うことを心がけましょう。
健康管理のポイント

大人の野良猫を飼う際の初期費用と健康管理は動物病院での検査と保険・助成制度の活用があげられます。以下でそれぞれ解説します。
動物病院で受けるべき検査
大人の野良猫を迎えたときに想定しておきたい初期費用の一つが、動物病院での健康診断や各種検査です。血液検査はもちろん、猫エイズや猫白血病ウイルスなどの感染症検査を行うことで、見えない病気の有無を早期に把握できます。エコー検査やレントゲン検査を勧められることもありますが、それは獣医師が猫の様子を見て、骨や内臓に問題がないかを詳細に確認したいと判断した場合になります。
特に外で暮らしていた期間が長い猫は、足裏や口腔内など目立ちにくい部分にケガや病気が残っているケースがあります。費用面を抑えたいと感じるかもしれませんが、猫の健康に関わる最初の大事なステップとして、安心して暮らすための投資だと考えれば受ける意義は大きいはずです。
保険・助成制度の活用
動物病院の診療費は決して安いものではなく、予想外の治療費がかかることも珍しくありません。もし猫の病気が重かったり、継続的に治療が必要になったりすると、経済的な負担が大きくのしかかってくる可能性があります。そのため、ペット保険に加入して治療費の一部をカバーしておくのは有効な選択肢です。保険会社によって補償内容や保険料は異なるので、慢性疾患に強いプランや通院が手厚く補償されるプランなど、猫の健康状態に合わせて選ぶと良いでしょう。
自治体によっては、去勢や避妊手術に助成金が出る制度を設けているところもあります。活用できる制度がないか情報を調べてみると、余計な出費を抑えながら、猫の生活の質を高めることにつながるかもしれません。
大人の野良猫を飼う準備をしよう
大人の野良猫を迎えるにあたっては、いくつもの段階を踏んでいく必要があります。保護の段階での注意点、健康診断やワクチン接種の費用など、一つひとつの手順をしっかり把握しておけば、後になってあわてることが少なくなるはずです。
特に性格面や健康面のケアを踏まえた上で、大人の猫ならではの落ち着きや留守番のしやすさを享受できれば、思った以上に新しい生活をスムーズにスタートできる可能性があります。保護した猫との暮らしは、最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、時間とともに信頼関係が深まると、それまでの苦労が報われるほどのやりがいが感じられるでしょう。大人だからこそ見せてくれる優しい一面を発見する喜びを想像しながら、しっかりと準備を進めてみてはいかがでしょうか。
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