- トップ
- ジャーナル
- 猫の病気と健康のお話
- フィラリア症は犬だけの病気じゃない!猫のフィラリア症の基礎知識【獣医師解説】
フィラリア症は犬だけの病気じゃない!猫のフィラリア症の基礎知識【獣医師解説】

「フィラリア症」は、犬の病気というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし実際には、猫もフィラリア症に感染します。猫の場合は、感染しても症状を示すことは少ないですが、体が小さい分少数の寄生でも重い症状を引き起こすこともあり、まれに突然死に至るケースも報告されています。
この記事では、猫のフィラリア症の症状や予防の考え方について、獣医師がわかりやすく解説します。大切な愛猫を守るために、まずは正しい知識を得るところから始めてみましょう。
フィラリア症(犬糸状虫症)とは?

フィラリア症は、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が心臓や肺動脈に寄生し、血流障害を起こす病気です。
フィラリアの幼虫は約0.3mmと顕微鏡でしか確認できないサイズですが、成虫になると30cm近くになることもあります。肉眼で見ると、そうめんのように白く細長い形をしています。
寄生虫には「宿主」と呼ばれる、住むのに適した動物がいます。フィラリアはもともと、犬科の動物を宿主とする寄生虫です。犬の体内では、フィラリアは成虫になるまで成長し、繁殖して長生きすることができます。
犬の場合の感染の流れ
感染の流れは以下の通りです。
- フィラリアに感染している犬の血液を蚊が吸い、幼虫を吸い込む
- 蚊の体内で感染幼虫が育つ
- 別の犬を吸血した際に、その幼虫が犬の体内に入る
- 犬の体内で成虫に成長し、心臓や肺動脈に寄生する
- 犬にフィラリア症の症状が現れる
フィラリアは犬の体内では5〜7年生きると言われ、重症例では何十匹もの成虫が寄生することもあります。
なぜ猫でフィラリア症が起こるのか

寄生虫はまれに、宿主以外の動物にも感染することがあります。猫のフィラリア症はこのケースです。
猫も蚊の吸血時にフィラリアに感染します。ただし、猫の体内はフィラリアの生育に適した環境ではないため幼虫のうちに死んでしまうことが多く、成虫になるまで生き残る確率は数%とされています。そのため、多くの症例では、寄生しても1〜数匹と数も少ないです。
猫のフィラリア症の症状

犬のフィラリア症の症状はたくさんの成虫が血管や心臓に詰まることによる血流障害が原因ですが、猫の症状は肺や気管支に強い炎症が起こることに起因します。肺の病変により以下のような呼吸器症状が現れます。
これらの症状は「HARD(犬糸状虫随伴呼吸器疾患、Heartworm-Associated Respiratory Disease)」と言われます。
- 苦しそうな呼吸をする
- 咳をする
- 口を開けて呼吸する
- 突然死を起こす(まれに)
それ以外にも、
- 食欲がなくなる
- 嘔吐をする
- 疲れやすくなる
などの、他の病気と区別がつきにくい症状を示すこともあります。
ただし、猫の体内では多くのフィラリアは死んでしまうので、無症状か、一時的に軽く症状が出るくらいのことが多いです。
まれに突然死を起こすことも
猫は体が犬と比べて小さく血管も細いため、数匹の寄生数でも血管に詰まったり、ショック症状をおこしたりして突然死を起こすこともまれにあります。
猫のフィラリア症はなぜ診断が難しい?

犬はフィラリアの寄生数が多いため、血液を使った抗原検査で数分でフィラリアの寄生を判定できます。また、エコーで心臓をみると、肺動脈や右心室に寄生しているフィラリアを確認することができます。
しかし、猫はフィラリアの寄生数が数匹と少なく、エコー検査で見つけ出すことはとても難しいです。抗原検査でも陰性と誤判定されることもあります。
また、猫のフィラリア症では症状が出ないことが多い上に、症状が出ても猫喘息など他の病気と間違えやすいものも多く、診断は慎重にならざるを得ず正確に診断するのはとても困難です。
治療はできるの?
犬で使用するような成虫の駆虫薬は、猫にはそもそも成虫が少ないのと、突然死などのリスクがあるため猫では使いません。
猫のフィラリア症の治療は、肺の炎症や咳を抑えるためのステロイドを使った対症療法が中心となります。猫の体内ではフィラリアはあまり長く生きられないため、いま出ている症状を薬で抑えながらフィラリアが死ぬまで待ちます。
猫のフィラリア予防について

猫のフィラリア症は診断が難しく、確率は低いものの突然死のリスクもあるため、基本的には犬と同じで予防薬を使用するのが最も重要です。室内でも蚊に刺される可能性はあるので、完全室内飼育だからと言って安心はできません。
薬を正しく使えば、フィラリア症はほぼ100%の確率で防ぐことができます。とはいえ、猫のフィラリア症はまだ飼い主にはあまり知られておらず、フィラリア症の予防薬を使用している方はまだ少ない印象です。
最近は、暖かくなる時期が早くなり、蚊が出現する期間が長くなってきました。そのため、犬でも今までは春から秋にかけてフィラリアの予防薬を飲ませていたところを1年通しての投薬に変更する病院もあります。
心配な飼い主は、住んでいる地域や飼育状況を踏まえ、かかりつけの獣医師と相談してください。
予防薬の使い方

フィラリア症は蚊の吸血によって感染するため、蚊の発生時期(通常5月〜11月)に合わせて、蚊が出現する頃〜蚊がいなくなった後1ヶ月までの、月1回の予防薬の使用が推奨されます。
予防薬には以下のタイプがあります
- スポットタイプ(滴下薬):猫に最も使用されているタイプ
- 飲み薬:苦手な猫が多いためやや不向き
飲み薬は錠剤のほかに、肉の味がついたチュアブル錠もあります。一般的には、月に1回猫の首の後ろに垂らすスポットタイプが手軽でおすすめです。現在、多くの動物病院ではフィラリア予防と一緒にノミ・ダニ駆除もできるオールインワンの薬が使用されています。
猫のフィラリア症に関するQ&A

フィラリア症に対する質問に回答します。
Q:フィラリア症は他の猫にうつりますか?
フィラリアは必ず蚊を介して感染します。フィラリアに感染している犬や猫と一緒に暮らしていたり、猫同士でグルーミングや食器の共用をしても、直接うつることはありません。
Q:室内飼育でも予防は必要ですか?
完全室内飼育であっても、感染の可能性がゼロになるわけではありません。
一方で、屋外に自由に出入りする猫に比べれば、蚊に刺される機会は少ないと考えられます。そのため、「室内だから絶対に不要」「室内でも必ず必要」と一律に言い切ることはできません。お住まいの地域の感染状況や生活環境を踏まえ、獣医師と相談してみましょう。
Q:予防薬に副作用はありますか?
一般的には安全性の高い薬が使用されています。滴下薬を使ってすぐは直接皮膚を触ったり、シャンプーなどで濡らしたりしないように注意しましょう。
まとめ
猫のフィラリア症は、犬ほど報告は多くはないものの蚊の出現期間が長くなっている今、注意が必要な病気です。
猫はフィラリアにとって本来の宿主ではないため感染してもほとんどが成虫になる前に死んでしまい、まれに成虫になるまで成長しても寄生数は数匹程度です。しかし、猫は体が小さい分、わずかな寄生数でも呼吸器症状や突然死につながることもまれにあります。
猫のフィラリアははっきりした症状が現れにくく、検査をしても確定診断をするのが難しい病気です。そのため、予防薬を正しく使い、確実に感染を防ぐことが大切です。感染は必ず蚊を介して起こり、室内飼育でも感染する可能性はゼロではありません。
一方で、地域や生活環境によって感染のリスクは異なります。猫のフィラリア症の正しい知識を持ち、猫の暮らし方に合わせて、かかりつけの獣医師と相談しながら予防について考えていきましょう。
【執筆・監修】
獣医師:安家 望美
大学卒業後、公務員の獣医師として家畜防疫関連の機関に入職。家畜の健康管理や伝染病の検査などの業務に従事。育児に専念するため退職し、現在はライターとしてペットや育児に関する記事を執筆中。
おすすめ記事
2025.03.12「保護猫と歩む、私の新しい一歩」オキエイコさんインタビュー
保護猫の迎え方や保護猫活動の多様さを、飼い主目線で描いたコミックエッセイ『ねこ活はじめました かわいい!愛しい!だから知っておきたい保護猫のトリセツ』の著者・オキエイコさん。 発売から4年が経ち、世の中ではずいぶん「保護 […]
2025.02.17保護猫活動の現場から—保護猫団体「ゆらり」代表・山岡りえさん インタビュー
「いつも通りに、猫と生きる」 いよいよスタートした保護猫支援プロジェクト「ピースニャンコ」。活動の主軸のひとつは、連携している保護猫ボランティアへの医療費支援だ。 猫のためにともに活動する仲間たちという想いを込めて、ピー […]
カテゴリー
人気ランキング

野良猫は冬をどう生きる?寒さ対策と私たちにできることを解説
寒さが厳しくなる季節、外で暮らす野良猫たちはどのように冬を乗り切っているのでしょうか。この記事では、野良猫が冬をどのように過ごしているのか、その実態と私たちにできるサポートについてご紹介します。 野良猫は冬をどう過ごして […]

「猫バンバン」の正しいやり方は?車と小さな命を守るためにできること
寒さが厳しくなると、温かい飲み物や暖房が恋しくなるのは人間だけではありません。外で暮らす猫たちにとっても、冬の寒さは命に関わる厳しい問題です。そんなとき、暖を求めて猫たちが入り込んでしまう場所の一つが、私たちの身近にある […]

「猫の種類は数あれど」キジトラ編
「キジトラ」といえば、茶色をベースにした黒縞模様。日本でもよく見かける猫の毛柄です。実はこのキジトラ、ただ身近な存在というだけでなく、猫の祖先の姿を最も色濃く残した毛柄でもあるのです。なぜキジトラはこんなに馴染み深いのか […]

「猫の種類は数あれど」白猫編
純白の気品あふれる姿に、どこか神聖さすら感じてしまう「白猫」。どんな色柄でも猫は等しくかわいいものですが、白猫には独特の特別感がありますよね。このイメージはどうやら世界共通のようです。 白猫について調べると、まず見えてく […]

野良猫の鳴き声がうるさくて困っている方必見!対策や根本的解決法を紹介!
夜中に「アオーン」「ニャオーン」と鳴き続ける野良猫の声で、眠れない夜を過ごしていませんか?特に春から夏にかけての季節、窓を開けて寝たい時期に限って野良猫の鳴き声が響き、仕事や学校に影響が出るような睡眠不足に悩まされること […]



















