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猫の歯周病|初期〜進行してからの症状や予防のためのケアまとめ【獣医師解説】】

「猫の口から生臭いにおいがする」
「よだれが増えた」
「いつも遊んでいるおもちゃに血がついている」
など、お口の異変に気づいたことはありませんか?もしかすると、それは歯周病のサインかもしれません。
歯周病は猫にとてもよく見られる病気です。口の中の症状だけにとどまらず、全身の健康にも悪影響を及ぼすことがあるため、日頃のケアや異常に気づいたときの早めの対処がとても大切です。
この記事では、猫の歯周病の原因や症状、治療法、おうちでできる予防ケアなどを獣医師がわかりやすく解説します。愛猫がシニア期になっても健康な歯でおいしくごはんを食べられるよう、ぜひ参考にしてください。
歯周病の原因

歯周病は、歯垢や歯石に含まれる細菌が原因となり、歯肉や歯を支える骨(歯槽骨)に炎症が起きる病気です。
歯垢の正体は口の中の細菌と食べ物のカスや唾液が混ざってできたものです。歯垢は2〜3日たつと硬く変化して歯石になります。歯石は歯の表面の溝や歯と歯茎の境目付近に溜まりやすく、そこで細菌が繁殖すると歯肉に炎症が起こります。この状態が「歯肉炎」で、歯周病の初期段階です。
歯肉炎が進行すると、炎症が歯槽骨にまで広がって骨が溶けるように壊れていきます。この状態を「歯周炎」といいます。
歯肉炎と歯周炎をまとめて「歯周病」と呼びます。
猫の歯周病の症状

歯周病の症状を進行に合わせて説明します。
初期症状は歯肉炎の症状が出る
歯周病の初期段階では以下のような症状が見られます。
- 軽い口臭がする
- 歯茎が赤く、ぶよぶよと腫れる
- 口の周りに触られるのを嫌がる
- おもちゃに血がつくことがある
健康な猫の歯肉は、ピンクで引き締まっています。歯肉炎になると違和感から食べ方が変わったり、食欲が落ちてしまったりする猫もいます。
進行すると歯周炎の症状が出る
歯槽骨が溶け始める段階まで進んでしまうと、以下のような重い症状が出始めます。
- 口臭が強くなる
- よだれが増える
- 歯がぐらつく
歯肉の炎症が歯茎の深い部分へ広がっていくと、歯をしっかりと覆っていた歯茎が段々と後退するため、歯が長くなったようにみえます。露出した歯は冷たい水などの刺激に敏感なので、痛みや違和感を覚えることもあります。
最終的にはごはんが食べられなくなる
重症の歯周病では、以下のような症状が見られます。
- 歯が大きく揺れる
- 歯肉から膿や血が出る
- 痛みのせいで食べられなくなる
炎症が口の中全体に広がってほとんどの歯がぐらついているようなケースでは全ての歯を抜いてしまう全顎抜歯を選択することもあります。
また、細菌が血液に乗って全身に回って心臓や腎臓、肝臓などの臓器に炎症を起こすこともあり、この場合は全身的な治療が必要です。
歯周病の動物病院での治療

歯周病の治療をまとめました。
初期の歯周病は改善が期待できる
炎症が歯肉にとどまっている初期の状態なら、動物病院で行う全身麻酔下でのスケーリング(歯石除去)に加え、自宅での歯磨きなどの日常的なケアで元に戻ることが期待できます。
スケーリングとは
猫に全身麻酔をかけ、超音波スケーラーで固くなった歯石を落とします。同時に、歯と歯茎の境目にできた歯周ポケットの洗浄も行います。
中〜重度の歯周病
歯のぐらつきが見られる段階では、スケーリングだけでなく抜歯が必要なケースもあります。ぐらついた歯は元には戻りません。歯を残すことでかえって痛みが長引いたり、炎症が続くリスクが高まるため、抜歯が最善の選択になります。
抜歯は全身麻酔が必要です。前歯や犬歯なら1本につき数分で抜けますが、奥歯は根元が深いため、30分程度かかります。抜歯後は抗生剤や鎮痛剤などを投与し、細菌の感染を防ぎます。
治療後の影響
もし全部の歯を抜いてしまったとしても、猫はウェットフードやふやかしたフードなら問題なく食べることができます。抜歯によって痛みがなくなり、むしろ食欲を取り戻すことも多いです。
歯周病の症状と見分けが必要な病気

猫の口臭や歯茎の炎症、よだれなどの症状は、歯周病以外の病気でもみられます。ここでは見た目では判断が難しい代表的な病気を紹介します。
ウイルス性感染症
以下のウイルス性感染症は、よだれや痛みによる食欲低下など、口に関連した症状が見られることがあります。
- 猫カリシウイルス感染症
- 猫免疫不全ウイルス感染症(FIV、通称猫エイズ)
- 猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
特にカリシウイルスは、くしゃみや鼻水などの風邪のような症状に加え口内炎ができることも多く、強い痛みを伴います。
FIVやFeLVは免疫力を低下させるため、口の中の衛生状態が悪くなって口内炎ができるほか、歯周病を悪化させるリスクが高くなります。
慢性腎臓病
猫の口臭の原因には、腎臓の機能低下が原因になっていることもあります。慢性腎臓病の猫では、アンモニア臭のような強い口臭がします。
口腔内腫瘍
口の中に扁平上皮癌や線維肉腫などの腫瘍ができると、腐敗臭のような口臭、よだれ、口からの出血が見られます。
口の中の腫瘍は悪性であることも多く、進行がとても早いため、顔の片側だけ腫れる、口を開けたがらないといった症状が見られたらすぐ動物病院に行きましょう。
吸収病巣
吸収病巣は、歯の表面や内側の組織が徐々に溶けていく病気です。進行すると歯が欠けたり、根元だけを残して崩れてしまうこともあります。原因はまだはっきりしていませんが、免疫の異常や慢性的な炎症が関係していると考えられています。
症状は歯周病と似ており、同時に起こっていることもあります。こちらも基本的に抜歯が必要です。
猫の歯周病予防に有効なのは歯磨き

自宅でできるお口のケアでは、歯磨きが一番効果的です。
まずは、猫専用の歯ブラシと飲み込んでも安全な歯磨きジェルを用意します。口を触られることが苦手な猫も多いので、いきなり歯ブラシを使わず、まずはスキンシップをしながら口の周りを優しく触れることから始めます。
少しずつ慣れてきたら、歯磨きジェルを塗った指で歯に触れたりして、段階的にステップアップし、最終的に歯磨きに挑戦してみましょう。
歯垢は3〜5日で歯石に変化します。毎日歯磨きができるのが理想ですが、少なくとも週に2〜3回を目安に続けられるペースで実施しましょう。
子猫のうちから歯磨きの習慣付け

歯周病は歯垢や歯石が長い間溜まることで起こるため、一般的には成猫で多い病気です。しかし、成長してからでは歯磨きを嫌がる猫もいるので、子猫のうちからお口のケアを習慣づけましょう。
歯磨きが苦手な猫のケア用品
猫を押さえつけて歯磨きしようとすると咬まれる危険があるだけでなく、猫が歯磨きを嫌いになってしまいかえって逆効果です。
どうしても歯磨きが苦手な猫には、デンタルガムや歯磨きシートなどのケアアイテムを使って、無理なくケアを続けましょう。
シニア期の口腔ケア
シニアになると免疫力の低下や唾液量の減少により、歯垢がたまりやすくなり、歯周病が進行しやすくなります。シニア期に入ったら以前より歯磨きの回数を増やし、よく口の中をチェックするようにしましょう。
動物病院での定期チェック
若いうちは年1回、シニア期以降は半年に1回を目安に健康診断を受け、獣医師に口の中の状態をチェックしてもらいましょう。
まとめ
猫の歯周病は、痛みや口臭といった口の不快な症状を引き起こすだけでなく、細菌が血流に乗って全身に回り内臓にも悪影響を及ぼすことがあります。歯周病が進行すると歯のぐらつきが見られるようになり、この場合は全身麻酔での抜歯が必要です。
歯周病を防ぐには、子猫のうちから歯磨きを習慣づけ、少なくとも週に2〜3回は歯磨きをしてあげるのが効果的です。シニア期になると歯周病になるリスクも高くなります。歯磨きが苦手な子には、歯磨きシートやデンタルガムなどのケアアイテムを使って無理なく上手にケアをしてあげましょう。
【執筆・監修】
獣医師:安家 望美
大学卒業後、公務員の獣医師として家畜防疫関連の機関に入職。家畜の健康管理や伝染病の検査などの業務に従事。育児に専念するため退職し、現在はライターとしてペットや育児に関する記事を執筆中。
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