猫の病気と健康のお話
2025.12.12
2026.01.05

​​猫の腎不全とは?症状や原因、治療、食事などの対処法を解説【獣医師監修】

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猫の腎不全には、急性腎不全と慢性腎臓病(慢性腎不全)という2つのタイプがあります。急性腎不全は急なダメージが腎臓にかかることで発症しますが、猫では比較的珍しい病気です。一方、慢性腎臓病は中高齢の猫の多くが発症し、シニア期に気をつけるべき代表的な病気の1つです。

この記事では、猫の腎不全について、原因、症状、治療方法まで、飼い主が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。若い頃から気をつけたいポイントも紹介しますので、大切な愛猫がいつまでも元気に過ごせるようにぜひ最後までお読み下さい。

この記事を読むと分かること

猫の腎不全とは

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腎臓には、血液をろ過して尿をつくり、体にたまった老廃物や余分な水分、ミネラルを排出するという役割があります。

腎不全は腎臓のはたらきが悪くなり、これらの不要なものが排泄できなくなった状態です。

腎不全の種類と原因

猫の腎不全には以下の2種類があります。

  • 急性腎不全
  • 慢性腎臓病

それぞれの発症の仕組みを解説します。

急性腎不全:短時間で起こる腎臓の障害

急性腎不全は、数時間〜数日という短期間で腎臓の機能が急激に悪くなる病態です。腎臓への血流が不足して尿が作れなくなったり、腎臓の細胞が直接ダメージを受けたりして発症します。

原因には以下のようなものがあります。

  • 脱水
  • 熱中症
  • 尿路閉塞
  • 中毒や薬の副作用
  • 腎盂腎炎などの感染症

急性腎不全を発症したら、迅速に治療を受けないと命を落とす可能性もあります。しかし、原因がすぐに特定でき適切な治療を受ければ、十分に回復が見込めます。

慢性腎臓病:加齢に伴い進行する病気

腎臓のろ過機能や水分を再吸収するはたらきは、年齢とともに少しずつ低下していきます。慢性腎臓病はこうした加齢に伴う腎機能の衰えが原因となって、体に症状が現れてくる病気です。

飼い主の中には「慢性腎不全」という言い方になじみのある方も多いでしょう。しかし近年では、獣医療の分野でも「慢性腎臓病(CKD)」という表現が主流となっています。

用語の使い分けは以下の通りとなっています。

  • 慢性腎臓病:検査で腎機能にわずかな異常が見つかる軽度の状態から、重度の腎不全に至るまで、すべてのステージを含む総称
  • 慢性腎不全:慢性腎臓病が進行して、腎臓の機能が著しく低下した状態

急性腎不全の症状と治療

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急性腎不全では以下のような症状が見られます。

  • 急に元気がなくなり、ぐったりする
  • 食欲がなくなる
  • 嘔吐や下痢がみられる
  • おしっこが出ない、あるいは極端に少ない

これらの症状が見られたら急いで動物病院につれていき、診察を受けさせましょう。

治療の流れ

急性腎不全の治療は、まず点滴で腎臓への血流量を増やして、脱水の改善や老廃物の排出を促します。あわせて、尿路閉塞や感染症、中毒など、腎不全の原因になっている疾患の治療も行います。

慢性腎臓病の症状と治療

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慢性腎臓病の症状を、初期・進行してから・末期に分けて解説します。

初期症状のサイン

初期の段階でははっきりとした症状は出にくく、猫の行動にわずかな変化が見られる程度のことが多いです。

  • よく水を飲む
  • おしっこの量が増える

腎臓で水分を再吸収する力が弱まると尿の量が増えます。その結果、猫は喉が渇いて水をよく飲むようになります。

進行してからの症状

慢性腎臓病が進行すると、以下のような症状が現れます。

  • 食欲が低下する
  • 痩せる
  • 毛づやが悪くなる

これらは年を取ると自然にみられる変化でもあるため、腎臓病による変化と気づきにくく注意が必要です。

末期の症状

病気がさらに進行し腎不全が重症化すると、次のような症状が見られるようになります。

  • 嘔吐や下痢が繰り返される
  • 食べない
  • 動かない
  • 尿が極端に減る、もしくは出なくなる(乏尿・無尿)
  • 口からアンモニア臭がする
  • けいれんをおこす

けいれんや、アンモニアの匂いがする口臭は、尿毒症によるものです。尿毒症は尿で排泄されるべき老廃物や毒素が体に溜まることが原因で引き起こされます。このような症状が出たらすぐに治療を受ける必要があります。

治療のポイント

腎臓の加齢性の変化は治療で元に戻すことはできません。よって、慢性腎臓病の治療は、病気の進行をゆるやかにするために行われます。

治療のポイントは以下の3点です。

  • 腎臓に負担をかけない食事管理
  • 薬による内科的なサポート
  • 点滴による脱水の改善と老廃物排出の補助

それぞれ解説します。

①腎臓に負担をかけない食事管理

腎臓にかかる負担を減らすため、タンパク質やナトリウムなどの成分を調整した療法食を与えます。

しかし実際のところ、慢性腎臓病の猫は食欲が落ちていて療法食を食べてくれないことも多いです。その場合は、まずは療法食よりもその猫が食べられるものを与えて体力の維持を優先させます。食欲が戻ったら、獣医師と相談しながら段階的に療法食へ移行するようにしましょう。

②薬による内科的サポート

症状や血液検査の結果に応じて、以下のような薬が使われます。

  • 制吐剤:吐き気の緩和
  • 降圧薬:高血圧の治療
  • エリスロポエチン製剤:貧血の治療
  • ラプロス:腎臓の線維化の抑制

ラプロスは、2017年に日本で承認された薬で、腎臓の構造的な老化(線維化)を抑える効果があるとされています。慢性腎臓病の初期~中期の猫に対して使用されます。

③点滴による脱水の改善と老廃物排出の補助

慢性腎不全では、尿量が増えるために脱水を起こしやすい状態になります。そのため、皮下点滴を行うことで、水分を補い、老廃物の排出をサポートします。

状態が安定するまでは、週1~3回を目安に動物病院で点滴を行います。飼い主が方法を覚えれば、通院せずに自宅で点滴をすることも可能です。

脱水の予防には、日常の水分摂取を増やすことも重要です。年を取ると、わざわざ水を飲みに行くのが大変になって、より一層飲水量が減る傾向にあります。次のような工夫をして、飲水量を増やしましょう。

  • 水飲み場をお気に入りの場所のそばに複数箇所設置する
  • ドライフードからウェットフードに変更する
  • 冬は水をぬるま湯にする

腎不全のQ&A

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腎不全の質問にお答えします。

慢性腎臓病は治りますか?

慢性腎不全は加齢による変化なので、病気は徐々に進行してしまいます。また、腎臓は再生しない臓器なので、一度傷ついてしまった組織は元には戻りません。

そのため、慢性腎不全が完治するのは難しいですが、腎臓の異常を早期に発見し、適切な食事管理や治療を行うことで、病気の進行を遅らせることはできます。

慢性腎臓病の余命はどれくらい?

進行度によって異なりますが、早期に発見して適切な治療を行えば数年以上元気に過ごせることも多いです。治療をしない場合は、数週間〜数ヶ月で悪化することもあります。早期発見と継続的なケアが寿命を大きく左右します。

慢性腎臓病にならないように若い頃からできることは?

猫はもともとあまり水を飲まない動物で、腎臓に負担がかかりやすい体質をしています。若いうちから生活習慣に気をつけてあげることで、将来の腎臓病のリスクを減らすことができます。

普段の生活では、以下のポイントに注意しましょう。

  • 栄養バランスの整った総合栄養食を与える
  • 人の食べ物は塩分を多く含むため与えない
  • 市販のおやつやサプリメントも、成分表示を確認して選ぶ
  • 年1回以上(シニア期は半年に1回)の健康診断を受ける

小さい頃からの生活習慣が将来の健康づくりに大きく関わります。若い頃から予防を意識して、腎臓をいたわる生活を心がけましょう。

まとめ

この記事では、猫の腎不全について、原因や症状、治療法などを解説しました。

腎不全には「急性腎不全」と「慢性腎臓病」の2つのタイプがあり、それぞれ発症のメカニズムや対処法が異なります。

急性腎不全は、中毒や尿路閉塞、感染症などが原因で腎臓の機能が低下し、短期間で命に関わる状態に陥ることもあります。異変に気づいたら、すぐに適切な治療を受けさせることが大切です。

一方、慢性腎臓病は高齢の猫に多く見られる病気です。食事の管理や点滴、薬によるサポートを続けることで、症状の進行をゆるやかにし、猫が快適に過ごせる時間を延ばすことができます。

慢性腎不全は、若い頃からの食生活や水分摂取に気を配ることで発症のリスクを減らすことができます。また、少しの変化にも気づけるよう日頃から注意深く見守ることが、長く健康に過ごすための第一歩になります。猫の様子に違和感があれば、早めに動物病院で相談しましょう。

【執筆・監修】
獣医師:安家 望美
大学卒業後、公務員の獣医師として家畜防疫関連の機関に入職。家畜の健康管理や伝染病の検査などの業務に従事。育児に専念するため退職し、現在はライターとしてペットや育児に関する記事を執筆中。

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