猫の病気と健康のお話
2025.12.05
2025.12.05

​​猫に多い皮膚病とは|赤い、かゆい、毛が抜けるといった症状の原因や対策を解説【獣医師監修】

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「猫の皮膚が赤い」「かゆそうにしている」「毛が抜ける」

猫の体や行動にそんな変化がみられたら、皮膚病のサインかもしれません。

猫の皮膚はとてもデリケート。寄生虫、アレルギー、感染症、ストレスなど、さまざまな原因でトラブルを起こします。中には、他の猫や人にうつる感染症もあるため、放置せず早めに適切な治療を受けることが大切です。

この記事では、猫に多い皮膚病について、代表的な症状、原因、治療法を解説します。猫にとってつらいかゆみなどの症状を見逃さず、症状の悪化や感染拡大を防ぐための知識を身に付けましょう。

この記事を読むと分かること

猫に多い皮膚病の症状とは

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猫の皮膚病は被毛のせいで見逃されがちですが、日頃から猫の行動をよく注意していると早めに気づけるものもあります。

ここでは、猫でよく見られる以下のような皮膚の症状

  • かゆみ
  • 赤み
  • 脱毛
  • かさぶた
  • フケ

について、それぞれ解説します。

かゆみ

猫が頻繁に体をかいたり、なめたり、噛んだりする様子が見られる場合、皮膚にかゆみを感じている可能性があります。皮膚への刺激を繰り返すと出血や脱毛の原因にもなるので対処が必要です。

赤み

赤みは、皮膚が炎症を起こしているサインです。ノミやダニ、アレルギー、真菌感染などが原因となり、皮膚が刺激を受けることで血管が拡張し、赤く見えるようになります。

脱毛

春や秋の正常な換毛と異常な脱毛の違いは、以下のようなポイントで見分けられます。

見分け方のポイント正常な換毛異常な脱毛(皮膚病など)
抜け毛の範囲全身まんべんなく一部の部位のみ
皮膚の状態健康で、赤みやかさぶたがない赤い、かゆい、かさぶた、フケなどの異常あり
かゆみ・グルーミング通常レベルの毛づくろいかく・なめる・噛むなど過剰なグルーミング
脱毛の形全体的にふんわりと抜ける円形・線状・左右対称のはげ方が多い
時期春・秋など季節と連動する時期に関係なく突然始まることもある

脱毛に皮膚の異常や行動の変化が伴うときは皮膚病の可能性も考え、動物病院に相談してみましょう。

かさぶた

かさぶたは、皮膚が傷ついたり炎症を起こした際に、出血や滲出液が固まってできるものです。猫がかき壊した部分や虫刺され、感染症などが原因でできることが多く、赤みや脱毛、かゆみを伴うことがあります。無理やり取ろうとすると皮膚を傷つけるので、剥がすのはやめましょう。

フケ

フケは、古くなった皮膚がはがれ落ちたもので、被毛に細かい白い粉がまぶされたように見えます。皮膚が乾燥している場合や、栄養の偏り、アレルギー、寄生虫、真菌感染などによって増えることがあります。健康な猫にも多少は見られますが、量が多いときは皮膚病のサインかもしれません。

猫に多い皮膚病の原因や症状、治療法

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皮膚のトラブルで動物病院への受診件数が多い病気は以下の6つです。

  • 好酸球性皮膚炎
  • ノミ寄生、ノミアレルギー性皮膚炎
  • 皮膚糸状菌症
  • 肥満細胞腫
  • 心因性脱毛
  • 疥癬(かいせん)

それぞれ、原因、症状、治療法を解説します。

好酸球性皮膚炎

好酸球性皮膚炎は原因がまだ解明されていませんが、ノミや食物、ハウスダストなどのアレルギーやストレスなどによる免疫の異常が原因と考えられています。体質とも関連が深く、治療で症状が治まっても繰り返すことがあるため、長期間の管理が必要です。

好酸球性皮膚炎は次の3つの病変に分類されます。

好酸球性肉芽腫

太ももの裏側や口の中に黄色〜ピンク色の盛り上がったしこりができます。かゆみを伴うこともあります。

好酸球性潰瘍

上唇の縁に潰瘍ができます。痛みやかゆみなどはなく、下から覗き込まないと見えない位置のため気づきにくい病変です。

好酸球性プラーク

お腹や内股に赤く盛り上がった湿疹が広がり、強いかゆみを伴います。

治療法は、ステロイド剤や免疫抑制剤で炎症を抑えます。

ノミ寄生・ノミアレルギー性皮膚炎

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ノミは屋外に出る機会がある猫だけでなく、室内飼育の猫でも注意が必要な寄生虫です。

ノミが体に寄生すると

  • 体をよくかく、噛む、なめる
  • しっぽの付け根や背中に赤み、脱毛、かさぶたができる
  • 毛の根元に黒い粒(ノミのフン)が見える

といった変化がみられます。

アレルギー体質の猫ではノミの唾液に反応してアレルギー性皮膚炎を起こし、強いかゆみや皮膚炎を起こすことがあります。

治療は、ノミ駆除薬の投与を行います。かゆみやかき壊しによる細菌感染にはステロイド剤や抗生物質を処方します。

皮膚糸状菌症

真菌(カビ)による感染症で、円形の脱毛や赤み、かさぶた、フケなどの症状が現れます。一緒に暮らしている犬や他の猫にも感染しやすく、人にも感染する可能性があるため注意が必要です。

治療は、抗真菌薬に加え薬用シャンプーや薬浴を行います。治療は1〜2ヶ月以上かかることもありますので、根気強く治療していきましょう。

肥満細胞腫

肥満細胞という免疫に関わる細胞が腫瘍化した病気です。

肥満細胞腫は、しこりが皮膚にできる型と、内臓にできる型があります。皮膚型では、しこり以外にも赤みや腫れ、脱毛がみられます。

治療は、外科手術でしこりを取り除きますが、悪性の場合は、抗がん剤や放射線治療も検討します。

心因性脱毛

毛づくろい(グルーミング)は猫が体を清潔に保つための生理的な行動です。しかし、猫が強いストレスを感じると、自分を落ち着かせるために体を過剰になめることがあります。その刺激で脱毛や皮膚の炎症が起こります。

治療は、ストレスの原因を取り除き、猫が安心して暮らせる環境を整えます。

疥癬

ヒゼンダニという小さなダニが皮膚に寄生して起こる病気です。とても強いかゆみを伴います。顔や首の周りに症状がでることが多く、厚いかさぶたができます。

他の猫や人にも感染することがありますが、ヒゼンダニは人の皮膚の上では繁殖できないため、人での感染は一時的です。

治療は、駆虫薬の投与と、細菌感染があれば抗生物質を追加します。

野外生活を送る猫で気をつけたい皮膚病

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野良猫や地域猫など、屋外で生活する猫たちは、ノミ・マダニの寄生、感染症、ケンカによる傷などで皮膚病にかかるリスクが室内飼育の猫よりも高いです。

以下のような病気に注意しましょう。

  • ノミ寄生・ノミアレルギー性皮膚炎
  • 疥癬
  • 皮膚糸状菌症

また、猫同士のケンカでは、猫エイズや猫白血病などのウイルス性の感染症のほか、傷から細菌感染をおこし、皮下膿瘍ができることもあります。

猫を保護した場合の注意点

今年は、マダニを介して猫や人にも感染する病気である、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の発生が全国で増加しました。外で過ごしている猫はマダニに吸血されている可能性もあります。

【関連記事】『重症熱性血小板減少症(SFTS)』とは?2つの感染経路、症状・対処法を詳しく解説【獣医師監修】|ピースニャンコ

保護した猫は、すぐに他の猫と接触させず、皮膚の状態をよく観察しましょう。

また、ノミ・マダニ予防薬の投与、真菌や細菌の検査、必要に応じた隔離管理を徹底することで、同居している他のペットや自分への感染拡大を防ぐことができます。

皮膚病の対策・再発防止のためにできること

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皮膚病を防ぐためには日常生活での予防とケアが大切です。

  • 定期的なノミ・ダニ対策
  • 生活習慣の見直し
  • 多頭飼育では、感染症対策

それぞれ解説します。

定期的なノミ・マダニ対策

ノミやマダニの予防は、室内飼育の猫であっても必要です。「うちは外に出さないから大丈夫」と思われるかもしれませんが、人間の衣服や他のペットを介して、ノミやマダニが室内に持ち込まれる可能性があります。

動物病院では、春〜秋にかけて月に1回、背中に垂らすタイプの駆虫薬が一般的に使用されています。冬はノミやマダニが減るので駆虫薬を使わない飼い主も多いですが、通年使用しても問題はありません。

飼育環境や生活習慣の見直し

ノミやマダニは環境の変化に強く、カーペット、布製の家具、畳の隙間などで長期間生き延びることができます。猫が過ごすスペースはこまめに掃除をするようにしましょう。

好酸球性肉芽腫や心因性脱毛などストレスが発症に関連する病気では、猫が過ごしやすい環境を整えることも大切です。遊びやコミュニケーションに運動を取り入れ、猫がストレスを溜めないよう工夫しましょう。

多頭飼育の感染症対策

新しい猫を迎える際には、隔離期間を設け、皮膚の異常が見られた猫は早めに診察を受けるよう心がけてください。

まとめ

猫の皮膚病は、症状や見た目が似ていても、寄生虫、感染症、アレルギー、ストレス、腫瘍など原因はさまざまです。

皮膚病の中には、皮膚糸状菌症のように人間や他の猫にうつる皮膚病もあります。日頃から愛猫の様子をよく観察し、皮膚に異常を感じたら早めに動物病院を受診することが大切です。

予防策として、ノミ・マダニ対策には、動物病院で処方される駆虫薬を定期的に使用し、生活環境の見直しも日常的に行いましょう。

【執筆・監修】
獣医師:安家 望美
大学卒業後、公務員の獣医師として家畜防疫関連の機関に入職。家畜の健康管理や伝染病の検査などの業務に従事。育児に専念するため退職し、現在はライターとしてペットや育児に関する記事を執筆中。

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