子猫にミルクを与える方法は?正しい量・頻度から注意点まで解説

道端で小さな子猫を保護したとき、まず頭に浮かぶのは「ミルクをあげないと!」ということではないでしょうか。しかし、焦って人間用の牛乳を与えるのは大変危険です。子猫を健やかに育てるためには、正しい知識を持ってミルクを与える必要があります。
この記事では、子猫のミルクの与え方について、準備するものから正しい飲ませ方、週齢ごとの適切な量や頻度、注意点まで詳しく解説します。大切な小さな命を守るために、ぜひ最後までお読みください。
子猫に人間用の牛乳を与えてはダメな理由

「猫はミルクが好き」というイメージから、急いで人間用の牛乳を与えようと考えてしまうかもしれません。しかし、それは子猫の体に大きな負担をかけてしまう危険な行為です。
特に、生まれたばかりで体力のない子猫にとって、下痢による脱水症状は命取りになりかねません。まずは、なぜ人間用の牛乳がダメなのか、その理由を正しく理解することが、子猫の命を守る第一歩となります。
猫が牛乳で下痢をしてしまう原因
多くの人が誤解しがちですが、子猫に人間が飲む牛乳を与えるのは絶対にやめましょう。牛乳に含まれる「乳糖(ラクトース)」という成分を、猫はうまく分解できません。 そのため、牛乳を飲むと消化不良を起こし、下痢や嘔吐の原因となってしまうのです。 体の小さな子猫にとって、下痢は脱水症状を引き起こし、命に関わることもあります。
必ず子猫専用のミルクを用意する
子猫には、必ずペットショップなどで販売されている「子猫用」または「猫用」のミルクを与えてください。猫用のミルクは、猫の消化器官に合わせて乳糖が分解されていたり、子猫の成長に必要な栄養素がバランスよく配合された「総合栄養食」であったりします。 保護したばかりで急を要する場合でも、自己判断で牛乳を与えるのではなく、まずは動物病院に相談するか、急いで猫用ミルクを準備しましょう。
子猫用ミルクの種類と選び方

子猫用ミルクには、主に「粉末タイプ」と「液体タイプ」の2種類があります。 それぞれに特徴があるため、状況に応じて使い分けるのがおすすめです。
長期保存できる粉末タイプ
粉末タイプは、お湯に溶かして作る手間はありますが、長期保存がきくのがメリットです。 開封後も比較的長く保管できるため、一匹の子猫を育てる場合に少しずつ作れて便利です。毎回作る手間はかかりますが、コストパフォーマンスに優れています。
手軽に与えられる液体タイプ
液体タイプは、缶や紙パックに入っており、温めるだけですぐに与えられる手軽さが魅力です。 作る手間がかからないため、多頭飼育の場合や、夜中の授乳で時間がないときに非常に助かります。ただし、粉末タイプに比べて保存期間が短く、開封後はすぐに使い切る必要があります。
子猫へのミルクの与え方【準備から授乳後まで】

ミルクの準備が整ったら、いよいよ授乳です。正しい手順で、安全にミルクを与えましょう。
手順1:授乳前に準備するもの
まず、授乳に必要なグッズを揃えましょう。子猫用の哺乳瓶、またはシリンジやスポイトを用意します。 哺乳瓶の乳首は、子猫の口の大きさに合わせて、なるべく小さいものを選ぶと良いでしょう。 また、ミルクを溶かすためのお湯や、温度を確認するための道具も準備しておくとスムーズです。
手順2:ミルクの温度を人肌に温める
ミルクの温度は、人肌程度の37〜38℃が適温です。 熱すぎるとヤケドの原因になり、冷たいと下痢をしてしまう可能性があります。作ったミルクを腕の内側に数滴垂らしてみて、少し温かいと感じるくらいがちょうど良い温度です。授乳の途中で冷めないように、湯煎しながら温度を保つのも良い方法です。
手順3:うつ伏せの姿勢で飲ませる
子猫にミルクを飲ませる際は、必ずうつ伏せの姿勢で行います。 自然な母乳を飲む体勢に近いため、子猫が安心しやすいです。軽く後頭部を支え、口元に哺乳瓶の乳首を持っていくと、自然に吸い付いてくれます。 仰向けで飲ませると、ミルクが気管に入って「誤嚥性肺炎」を起こす危険性が非常に高いため、絶対にやめてください。
手順4:授乳後はゲップと排泄をさせる
ミルクを飲み終わったら、人間の赤ちゃんと同様にゲップをさせてあげましょう。縦に抱きかかえて背中を優しくトントンと軽く叩き、ミルクと一緒に飲み込んだ空気を抜いてあげます。
また、生後3週間くらいまでの子猫は自力で排泄ができません。母猫がお尻を舐めて排泄を促す代わりとして、ぬるま湯で湿らせたティッシュやコットンで、お尻を優しくポンポンと刺激してあげましょう。
【週齢別】子猫に与えるミルクの量と頻度の目安

子猫の成長には、適切な量のミルクを適切な回数与えることが不可欠です。ただし、以下の表はあくまで目安です。子猫の体重や飲みっぷりをよく観察し、個体に合わせて調整してください。もし保護した子猫の週齢がわからない場合は、動物病院で推定してもらうと良いでしょう。
週齢 | 1回のミルクの量 | 1日の授乳回数 | 授乳間隔 |
生後1週(~7日) | 5~10ml | 8~12回 | 約2~3時間おき |
生後2週(8~14日) | 10~15ml | 6~8回 | 約3~4時間おき |
生後3週(15~21日) | 15~20ml | 5~6回 | 約4時間おき |
生後4週(22~28日) | 20ml~ | 4~5回 | 約5時間おき |
生後1週齢のミルクの量と頻度
生まれたばかりの子猫は、まだ胃が小さく一度にたくさんの量を飲めません。2〜3時間おきに、こまめに授乳してあげる必要があります。
生後2週齢のミルクの量と頻度
少しずつ飲む量が増え、授乳の間隔も少し空いてきます。体重が順調に増えているか、毎日チェックすると健康管理に役立ちます。
生後3週齢のミルクの量と頻度
乳歯が生え始める子猫もいます。飲む力も強くなり、一度に飲める量が増えてきます。この頃から、排泄を自分でできるようになる子もいます。
生後4週齢以降のミルクの量と頻度
飲む量も増え、授乳間隔もさらに空いてきます。そろそろ離乳食への移行を考え始める時期です。
子猫がミルクを飲まない時の原因と対処法

一生懸命ミルクを準備しても、子猫が飲んでくれないこともあります。そんな時は、焦らずに原因を探ってみましょう。
ミルクの温度が適温でない
前述の通り、ミルクの温度は非常に重要です。冷たすぎたり熱すぎたりすると、子猫はミルクを飲んでくれません。もう一度、人肌程度の温かさになっているか確認してみましょう。
哺乳瓶の吸い口が合わない
哺乳瓶の乳首のサイズが口に合っていなかったり、穴が小さすぎてミルクが出にくかったりすると、飲むのを嫌がることがあります。乳首の穴を少し大きくしてみたり、シリンジやスポイトに変えてみたりするのも一つの方法です。
体調が悪い可能性がある
何らかの病気や衰弱によって、ミルクを飲む元気がない可能性も考えられます。ぐったりしている、体温が低いなど、いつもと違う様子が見られる場合は、すぐに動物病院を受診してください。自己判断で様子を見るのは危険です。
子猫にミルクを与える際の注意点

子猫の命を守るために、ミルクを与える際にはいくつか注意すべき点があります。
仰向けでミルクを与えない
繰り返しになりますが、仰向けの姿勢でミルクを与えるのは非常に危険です。ミルクが気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあります。 必ずうつ伏せか、それに近い姿勢で飲ませてください。
無理やり飲ませようとしない
飲みたがらないからといって、口をこじ開けて無理やりミルクを流し込むのはやめましょう。 誤嚥の原因になるだけでなく、子猫にとって食事が苦痛な時間になってしまいます。個々のペースに合わせて、焦らずに対応することが大切です。
ミルクを与えすぎない
飲みたがるからといって、欲しがるだけ与えすぎるのも良くありません。 飲み過ぎが原因で下痢や嘔吐をすることもあります。 目安量を参考にしつつ、飲んだ後のお腹の張り具合や体調をよく観察しましょう。
子猫のミルクはいつまで?離乳の進め方

子猫は、いつまでもミルクを飲み続けるわけではありません。次のステップである「離乳」について知っておきましょう。
生後3~4週齢頃から離乳食を開始
一般的に、乳歯が生えそろう生後3〜4週齢頃が離乳食を開始するタイミングです。 最初はミルクに離乳食用のウェットフードを少量混ぜ、ペースト状にして与えることから始めます。慣れてきたら、徐々にフードの割合を増やしていきましょう。
徐々にミルクの量を減らしていく
離乳食を食べるようになったら、その分ミルクの量を減らしていきます。 離乳食を食べた後に、欲しがるようであればミルクを与えるという形に切り替えていくとスムーズです。個体差はありますが、一般的には生後8週齢頃までにミルクを卒業するのが目安です。
まとめ
この記事では、子猫に与えるミルクの種類や正しい与え方、注意点について解説しました。初めて子猫の授乳をする際は、不安なことばかりだと思いますが、正しい知識を持つことが小さな命を救う第一歩となります。子猫の様子をよく観察しながら、愛情を持って焦らずにお世話をしてあげてください。
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