猫の肥満は病気のもと?肥満の見分け方やダイエットの方法を徹底解説【獣医師監修】

「最近、うちの猫ちょっと太り気味かも…」と感じていませんか?
猫の肥満は見た目の問題にとどまらず、糖尿病や関節炎、心臓病などの病気のリスクを高め、寿命を縮めることさえあります。
本記事では、猫の肥満の原因や見分け方、肥満が引き起こす病気のリスク、そして健康的なダイエットや肥満の予防について、獣医師が解説します。愛猫の体型管理にぜひ役立ててください。
猫の肥満とは?

肥満は、単に「ちょっと太っている」という状態ではなく、医学的に健康リスクの高い状態を指します。一般的に、理想体重より15%以上重い場合が肥満とされています。
肥満になる原因
猫が肥満になる背景には、以下のような要因があります。
- 食べる量が多い
- 運動不足
- 代謝やホルモンに関わる病気
- 避妊・去勢手術後のホルモン変化
それぞれ解説します。
食べる量が多い
猫は体が小さいため、少しのフードやおやつの与えすぎでもすぐにカロリーオーバーになり、数百gの体重増加が健康に大きな影響を及ぼします。
フードの袋に記載された給餌量はあくまで目安なので、個体差や運動量によって調整が必要です。また、1日に必要なカロリーの10%を超えるおやつは肥満につながります。カロリーが高いジャーキーや、嗜好性が高くついたくさん与えてしまいがちなチューブ状のおやつは注意が必要です。
運動不足
猫はのんびり過ごすのが好きな動物なので、遊びのきっかけがないと寝ている時間が増えてしまいます。飼い主さんの工夫で運動量を確保してあげることが重要です。
代謝やホルモンに関わる病気
クッシング症候群でホルモンバランスが崩れると体重や体型に変化がみられます。このようなケースでは、通常のダイエットではなく、病気の治療が必要になります。
「適正量しか与えていないのに急に体型が変わった」場合は、必ず獣医師の診察を受けましょう。
避妊・去勢手術後のホルモン変化
避妊・去勢手術は猫にとって大切な処置ですが、ホルモンバランスが変化することで肥満リスクが高まるとされています。
具体的には、手術後は食欲が増すと同時に基礎代謝が下がり、以前と同じ量のフードでも太りやすくなります。
肥満の見分け方とチェック方法

猫は犬ほど品種による体型差はないものの、性別、骨格によって適正な体重は違うので、一律に「何kgから肥満」という基準はありません。肥満の見分け方には、ボディコンディションスコア(BCS)という指標を使って体型から判断することをおすすめします。
ボディコンディションスコア(BCS)とは
BCSは猫の体型を見た目や感触で評価する方法です。5段階方式と9段階方式の2種類がありますが、ここでは、動物病院で飼い主さん向けに使われるシンプルでわかりやすい5段階方式を使って解説します。
BCS 1:痩せすぎ
- 肋骨や背骨が浮き出ていて、触らなくてもわかる
- 腰回りが極端に細くなっている
- 筋肉や脂肪がほとんどついていない
痩せすぎも健康にはよくありません。栄養不足や病気の可能性もあるので、獣医師に相談しましょう。
BCS 2:やや痩せ気味
- 肋骨がすぐ触れる
- 上から見ると腰がくっきり細くなっている
- お腹が引き締まり過ぎている
この体型は、シニア猫や病後の猫で多くみられます。
BCS 3:理想的(標準体型)
- 肋骨が軽く触れるが、浮き出てはいない
- 上から見て腰に適度なくびれがある
- お腹は引き締まっているが、痩せすぎではない
BCS 3が猫にとって最も理想と言われる体型です。
BCS 4:やや太り気味
- 肋骨が触りにくい
- 腰のくびれがほとんどない
- お腹が少し丸みを帯びている
肥満の一歩手前です。ダイエットを検討しましょう。
BCS 5:肥満
- 肋骨がほとんど触れない
- 上から見て胴体が丸い体型をしている
- 下腹部が大きく垂れ下がっている
- 歩くとお腹が揺れる
体重が標準を大きく超えており、病気のリスクが高まっている状態です。食事と運動の見直しを検討しましょう。
BCS判定のチェックポイント
以下の3つのポイントに気をつけて、猫のBCSを判定してみましょう。
- 軽く触って肋骨がすぐわかるか?
- 上から見たときに、腰にくびれがあるか?
- お腹が大きく垂れ下がったり、歩く時左右に揺れていないか?
他にも、
- ジャンプや遊びの動きが鈍っていないか?
- 疲れやすくないか?
といった日常生活での行動の変化にも気をつけてあげましょう。
肥満が引き起こす病気とリスク

猫の肥満はただの体型の問題ではなく、以下のような病気の引き金になります。
- 糖尿病
- 関節炎などの関節疾患
- 心臓や呼吸器の疾患
それぞれ解説します。
糖尿病
体内に脂肪が増えると血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなり、血糖値の高い状態が続きます。その結果、糖尿病を発症しやすくなります。特に中高齢の去勢済みのオス猫では注意が必要です。
関節炎などの関節疾患
体重が増えると関節に余計な負担がかかり、変形性関節症や関節炎を起こしやすくなります。特に後ろ足や腰、膝を痛めやすく、痛みのせいで動きが鈍くなったり、段差を避けるようになったりする結果、運動量が減ってますます太るという悪循環に陥ります。
心臓や呼吸器の疾患
心臓は体の隅々まで酸素や栄養を送るポンプの役割を担っており、肥満によって負担が大きくなると心筋症や心不全のリスクが高まります。さらに脂肪で肺が圧迫されると呼吸がしにくくなり、軽い運動でも息切れしやすくなったり、安静時に呼吸が荒くなったりすることもあります。心臓や呼吸器の病気は進行すると命に関わるため、注意が必要です。
猫の肥満対策(ダイエットと予防)

肥満の原因の多くは食事と運動習慣が関係しているため、飼い主が適切に管理することで予防できます。
猫の肥満対策は
- すでに太っている猫を減量させること(ダイエット)
- 標準体型の猫をそのまま維持すること(予防)
の2つに分けられます。
基本的なアプローチはどちらも同じで、以下の3つです。
- 食事管理
- 運動・生活環境
- 健康チェック
目的によって工夫すべきポイントが異なるため、肥満猫と標準体型の猫に分けて解説します。
肥満猫のダイエット
肥満猫の食事は減量のための療法食を与え、必要な栄養素を摂取しつつカロリーを抑えましょう。おやつは摂取カロリーが変わってしまうため、与えないようにしてください。
激しすぎる運動は関節や心臓に負担がかかるので、短時間で軽めの遊びを少しずつ増やしてみましょう。キャットタワーで日常生活に上下運動を取り入れることや、フードボールや知育トイを活用して食べながら動く工夫も有効です。
ダイエット中は週に1回の体重測定と、BCSのチェックを習慣にしましょう。体重の減少ペースは1か月に現在の体重の1〜2%が理想で、あまりに急激に体重が落ちると体に負担がかかります。獣医師の指導のもとでダイエットに取り組みましょう。
標準体型の猫の肥満予防
標準体重の猫は、毎日同じ量のフードを与えることが大切です。おやつは1日の必要カロリーの10%以内が目安です。人間の食べ物は塩分や脂肪が多く、肥満だけでなく健康への悪影響につながることもあるので、与えないでください。
運動の習慣も変わらず続けていくと自然と体型を維持できます。
まとめ
猫の肥満は内臓や関節に大きな負担をかけ、多くの病気のリスクを高めます。一度体重が増えてしまうと体が重くなり、動くのを嫌がるようになりがちで、改めて運動習慣を身につけさせるのは簡単ではありません。若いうちからBCSを意識し、食事と運動をバランスよく管理することが肥満予防の鍵です。
すでに太っている猫では、減量のための療法食を与え摂取カロリーを落としていきます。日々の運動は、家具の配置を工夫したり、遊びに動きを取り入れたりして、習慣化していきましょう。ダイエットは自己流ではなく、必ず獣医師と相談しながら進めてください。肥満は万病の元といわれます。愛猫との健康的な楽しい毎日が続くよう、体型管理を心がけましょう。
【執筆・監修】
獣医師:安家 望美
大学卒業後、公務員の獣医師として家畜防疫関連の機関に入職。家畜の健康管理や伝染病の検査などの業務に従事。育児に専念するため退職し、現在はライターとしてペットや育児に関する記事を執筆中。
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