猫の食事量はどれくらい?年齢や体重に合わせた適切な計算方法を解説!

愛猫が毎日美味しそうにご飯を食べる姿は、飼い主にとって何よりの喜びです。しかし、その一方で「今の食事量で本当に足りているのかな?」「もしかして与えすぎ?」など不安に感じている方も多いのではないでしょうか。猫の健康を維持するためには、人間と同じように、適切な食事管理が欠かせません。食事量が多すぎれば肥満のリスクが高まり、少なすぎれば栄養不足になってしまいます。
この記事では、誰でも簡単に実践できる猫の適切な食事量の計算方法から、年齢や体調に合わせた調整のポイントまで、分かりやすく解説します。愛猫の健康で幸せな毎日のために、正しい食事の知識を身につけましょう。
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猫の正しい食事量を計算する3つのステップ

猫の食事量を決める際、キャットフードのパッケージに記載されている給与量はあくまで目安です。より正確な食事量を把握するためには、あなたの愛猫の状態に合わせたカロリー計算が必要です。ここでは、動物病院でも用いられる計算方法を、3つの簡単なステップに分けてご紹介します。
ステップ1:安静時エネルギー要求量(RER)を求める
まず、猫が何もしなくても生命維持に最低限必要なエネルギー量である「安静時エネルギー要求量(RER)」を計算します。RERは、以下の式で求めることができます。
RER (kcal/日) = 70 × (体重kg) ^ 0.75
この計算が難しいと感じる場合は、より簡単な以下の式でもおおよその値を算出できます。
RER (kcal/日) = 体重(kg) × 30 + 70
例えば、体重4kgの猫の場合、「4kg × 30 + 70 = 190kcal」が1日に最低限必要なカロリーの目安となります。
ステップ2:1日のエネルギー要求量(DER)を求める
次に、RERに猫の状態に応じた「係数」を掛けて、1日に本当に必要なエネルギー量である「1日あたりのエネルギー要求量(DER)」を算出します。この係数は、猫の年齢や活動量、避妊・去勢手術の有無によって変わります。
DER (kcal/日) = RER × 係数
猫の状態 | DER指数 |
成長期(〜4ヶ月) | 3.0 |
成長期(4ヶ月〜1年) | 2.0 |
避妊・去勢済の成猫 | 1.2 |
未避妊・未去勢の成猫 | 1.4 |
高齢猫(7歳〜) | 1.1 |
活発な猫 | 1.6 |
減量中の猫 | 0.8 |
例えば、先ほどの体重4kgで避妊手術済の成猫の場合、「RER 190kcal × 係数1.2 = 228kcal」が1日に必要なカロリーとなります。
ステップ3:フードのグラム数に換算する
最後に、DERをキャットフードのカロリーで割り、1日に与えるべきフード量をグラムで算出します。フードのカロリーはパッケージに「代謝エネルギー(ME)」として「100gあたり〇〇kcal」と記載されています。
1日の給与量 (g) = DER ÷ (フードの100gあたりのカロリー) × 100
例えば、DERが228kcalで、フードが380kcal/100gの場合、「228 ÷ 380 × 100 ≒ 60g」が1日の適切な給与量となります。この量を1日の食事回数で割って、1回あたりの量を決めましょう。
【ライフステージ別】猫の食事量の目安と注意点

猫は年齢によって必要なエネルギー量や栄養バランスが大きく異なります。ここでは「子猫」「成猫」「高齢猫」の3つのステージに分けて、食事のポイントを解説します。
子猫(〜1歳)の食事量と与え方
子猫は骨格や筋肉など、体が急速に成長するとても重要な時期です。成猫の2〜3倍のエネルギーと、成長を支える豊富な栄養素を必要とします。必ず「子猫用」や「グロース」と表示された、高カロリー・高タンパクな総合栄養食を与えてください。
胃が小さく一度にたくさん食べられないため、生後半年くらいまでは1日3〜4回以上に分けて与えるのが理想です。
成猫(1〜6歳)の食事量と与え方
成猫期は、体格が安定し、エネルギー要求量が落ち着いてくる時期です。しかし、室内飼いの猫は運動不足になりがちで、特に避妊・去勢手術後は太りやすくなるため、体重管理が重要になります。
食事は1日2〜3回に分けて与えるのが一般的です。 定期的に体重を測定し、前のセクションで計算した適正な食事量を守り、肥満を防ぎましょう。
成猫の体重(kg) | 避妊・去勢済の給与量目安 (g/日) |
2.0~4.0 | 30~45 |
4.0~6.0 | 45~60 |
6.0~8.0 | 60~75 |
※フードが380kcal/100gの場合の目安です。
高齢猫(7歳〜)の食事量と与え方
7歳を過ぎたシニア期に入ると、運動量が減り、基礎代謝も低下するため、成猫期よりも必要なエネルギー量は少なくなります。 一方で、消化機能の衰えや腎臓への負担も考慮する必要があるため、「高齢猫用」「シニア用」と表示されたフードへの切り替えを検討しましょう。
一度に食べられる量が減ることもあるため、1回の量を減らし、食事の回数を1日3〜4回に増やすなどの工夫が必要です。
体調や状況別で見る食事量の調整ポイント

猫のライフステージだけでなく、個々の体調や状況によっても最適な食事量は変わります。ここでは、特によく見られるケースについて解説します。
避妊・去勢手術をした猫は太りやすい?
避妊・去勢手術後は、性ホルモンのバランスが変化し、基礎代謝が低下するため、以前と同じ量の食事でも太りやすくなる傾向があります。DER計算の係数が示す通り、必要なエネルギー量は約2割減少します。手術後は食事量を調整するか、避妊・去勢後用の低カロリーなフードに切り替えることをお勧めします。
肥満気味の猫のダイエット方法
猫の肥満は、関節炎や糖尿病など、さまざまな病気のリスクを高めます。ダイエットが必要な場合は、まず獣医師に相談しましょう。自己判断で極端に食事を減らすのは危険です。
基本的には、DER計算の減量期の係数(0.8)を使い、摂取カロリーを通常より抑えます。獣医師の指導のもと、「減量用」の療法食を使い、おやつを控えるのが効果的です。
痩せ気味の猫への食事アプローチ
猫が痩せている原因は、食事量不足だけでなく、病気が隠れている可能性もあります。まずは動物病院で健康状態をチェックしてもらいましょう。
病気ではない場合、食事の嗜好性を高める工夫が有効です。例えば、ドライフードを少し温めて香りを立たせたり、風味の良いウェットフードをトッピングしたりすると、食欲が増すことがあります。
ドライフードとウェットフードで量は変わる?

キャットフードには大きく分けてドライタイプとウェットタイプがあります。それぞれに特徴があり、与える際の注意点も異なります。
ドライフードを与えるメリットと注意点
ドライフードは栄養価が高く、長期保存が可能で経済的というメリットがあります。また、硬い粒を噛むことで歯石が付きにくいという効果も期待できます。
ただし、水分含有量が約10%と少ないため、ドライフードを主食にする場合は、いつでも新鮮な水が飲めるように環境を整えてあげることが非常に重要です。
ウェットフードを与えるメリットと注意点
ウェットフードは約80%が水分でできているため、食事をしながら自然に水分補給ができるのが最大のメリットです。食欲がない時や、水をあまり飲まない猫、腎臓病のリスクがある猫に適しています。
一方で、ドライフードに比べて傷みやすいため、開封後は冷蔵保存し、早めに使い切る必要があります。また、歯に付着しやすいため、デンタルケアも意識しましょう。
ドライフードとウェットフードを併用する場合の計算方法
両方を併用する場合は、それぞれのカロリーを計算して、1日の総摂取カロリー(DER)を超えないように調整が必要です。
計算例(1日228kcal必要な猫の場合)
1. 与えたいウェットフードのカロリーを確認する(例:1パウチ40kcal)
2. 1日のDERからウェットフードのカロリーを引く(228 – 40 = 188kcal)
3. 残りのカロリー(188kcal)をドライフードで摂取する量を計算する
このように、それぞれのフードのカロリーを把握し、合計値を管理することが大切です。
猫の食事に関するよくあるお悩みQ&A

ここでは、飼い主さんからよく寄せられる食事に関する疑問にお答えします。
欲しがるだけ与えても大丈夫?
猫は愛らしい姿でおねだりをしてきますが、欲しがるだけ与えるのは肥満の原因となるため避けるべきです。おやつを含め、1日に必要な総エネルギー量(DER)を超えないように管理することが健康の秘訣です。おやつは1日のDERの10%〜20%以内が目安とされています。
食事を残してしまう原因と対処法
猫が食事を残す原因は様々です。「お腹が空いていない」「フードが気に入らない」といった理由のほか、口内炎や消化器系の病気など、体調不良が原因の場合もあります。
まずはフードの種類を変えてみたり、お皿を清潔に保ったりといった工夫を試してみてください。それでも改善しない場合や、元気がないなど他の症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
1日の食事の回数は何回が理想?
猫はもともと、少量の獲物を時間をかけて狩り、少しずつ食べる習性のある動物です。そのため、1日の給与量を一度に与えるのではなく、複数回に分けて与えるのが理想的です。成猫であれば1日2〜3回、子猫や高齢猫、消化器が弱い猫の場合は1日3〜4回以上に分けると、消化器官への負担を減らすことができます。
野良猫に食事を与えても良い?
お腹を空かせた野良猫を助けたいという気持ちは尊いものですが、無責任な餌やりは様々な問題を引き起こす可能性があります。餌を与えること自体が法律で禁止されているわけではありませんが、食べ残しや糞尿による悪臭、害虫の発生といった衛生問題や、近隣住民とのトラブルに発展するケースもあります。
【関連記事】野良猫への餌やりは違法?気を付けるべきポイントや猫を救うための活動を紹介 – ピースニャンコ
まとめ
愛猫の健康を守るためには、日々の食事管理が不可欠です。この記事で紹介した計算方法を参考に、まずはあなたの猫の適正な食事量を把握することから始めましょう。そして、日頃から愛猫の体重や体型、食欲、便の状態などをよく観察し、変化に合わせて食事を調整することが大切です。正しい知識に基づいた食事管理で、愛猫との幸せな毎日を長く育んでいきましょう。
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