「猫のしぐさ大辞典」ツン編
猫の魅力は数えきれませんが、やはり愛猫家を夢中にさせる一番のポイントは、彼らの気まぐれなツンデレぶりではないでしょうか。
今回の猫のしぐさ大辞典は“ツン編”。猫たちのネガティブな気持ちをあらわすしぐさを集めてみました。愛猫からのメッセージを正しくキャッチするべく、一つひとつ見ていきましょう!
お腹を見せたからといって、降参したわけじゃない!?

多くの動物にとって“急所”であるお腹。そこを自分から見せてくるというのは、信頼やリラックスの証。もちろん猫もそうです……が、実は状況によって「お腹を見せる」は、違った意味になるのです。
というのも、お腹が見えるように仰向けに寝ころがると、足は4本ともフリーになりますよね? もし前足&後ろ足がしっかり構えていて、すぐに動ける体勢だったら、それはずばり「来るなら来い、タダじゃ済まさないぞ」という意味。反撃の準備ポーズです。
愛猫がお腹を見せる前は、どんな状況でしたか? もしかして、叱ろうとしていたところでは? その場合、「自分を叱ろうとしている飼い主」は猫にとって敵みたいなものですから、迎え撃とうとしたのでしょう。
決して「降参です!」「反省してるから許して」という意味ではないので、勘違いしてお腹に手を伸ばしたら、たちまちキックが飛んでくるはず。もしかしたら噛みつきや引っかき攻撃までされるかも。
もしくは、過去にこのポーズを見た飼い主さんが「反省してるんだな」と叱るのをやめたことがあれば、それを学習している可能性も。「叱られそうなときはこのポーズ!」と思っているのかもしれません。
しっぽが語る、ちょっと微妙な気持ち

犬と同じように、猫にとっても感情が大きくあらわれるパーツであるしっぽ。「ピンと立てる」のは愛情表現ですが、もし「垂れた状態のしっぽの先を、左右にゆらゆら」させていたら、その猫の気持ちはちょっと曇り空です。
しっぽの先をゆっくり動かしているときの気持ちは、言葉にするなら「どうしようかな~」という感じ。気になるものがある、ちょっとうっとうしい、でも攻撃するほどではない……。そんな風に様子見をしています。
もしあなたの膝に乗せて撫でているときに、しっぽの先がゆらゆら動き始めたら、そろそろ飽きてきた合図。イライラが募る前に手を離して、自由にさせてあげましょう。
“ゆらゆら”ではなく、小刻みに“ピクピク”動かしていたら、同じ「気になる」でも「興味がある」に近い状態。獲物を狙って集中しているときなどに、この動きが見られますよ。
また、名前を呼んだときにしっぽの先を動かしたら、それは猫なりの返事。振り向いたり鳴いたりしなくても、「はーい、聞いてるよ」と応えているのです。
しっぽブンブンは猫からの最終通告

膝の上で撫でているとき、しっぽの先が揺れ始めたのに気付かないと、どうなると思いますか? 答えは「しっぽを左右に大きくブンブン振る」。かなり不機嫌でイライラしているサインです。
撫でているときに限らず、猫がしっぽを激しく振っていたら、機嫌が悪い証拠。言葉にするなら「すっごく嫌!」といったところですから、犬とは真逆ですね。座ったり横になっていると、床や地面にしっぽを叩きつけてバンバンと音が出るほどです。
もしこの振り方をしていたら、声を掛けたり触ったりするのはNG。愛猫から「撫でて~」と近付いてきた後だとしても、もう撫でてもらうのに飽きてしまったということでしょう。秋の空よりも気まぐれなのが猫心ですから、仕方ありませんよね。
少しずつ大きくなるしっぽのサインに気付かないと、突然引っかかれてしまうかも。ついフワフワで滑らかな毛並みにうっとりしてしまいますが、いついかなるときも愛猫の気持ちにはアンテナを立てておいたほうが良さそうです。
「イカ耳」に込められた猫の必死な気持ち

猫の気持ちがあらわれるしぐさとして有名なのが「イカ耳」ではないでしょうか。平常心のときはまっすぐ前を向いて立っている耳が、横を寝かせたような形に伏せられ、外を向いてピンと張っている状態をこう呼びます。
「イカ耳」のときの気持ちはいろいろありますが、共通して言えるのはネガティブな感情だということ。不安、怒り、恐怖……。状況や体全体の姿勢もあわせて判断することで、より正確に読み取ることができるでしょう。
正面から見たときに、耳の後ろ側が見えるほど後ろに反っている「イカ耳」なら、「攻撃するぞ!」「近付くな!」といった怒りのあらわれ。全身を見ると、腰が高くて頭は低い、攻撃態勢に入っているのでは。
表情をよく見ると、ヒゲが前向きになり、瞳孔は細くなって、全体的に険しい顔つきになっているはずです。
同じ威嚇でも、心の中はちょっと違う

同じ「イカ耳」でも、ぺたりと寝かせるような形であれば、怒りよりも恐怖を感じているときです。
相手が明らかに自分より強いときなら、体を小さくして縮こまっていることでしょう。瞳孔は恐怖で大きく開き、ヒゲは後ろ向きに。全身で「攻撃しないで!」と訴えているのが、見るからに伝わってきますよね。
ただ複雑なのが、毛を逆立てて体を弓なりにして威嚇しているとき。これほど自分を大きく見せようとしているのは、内心では怖いと思っている証拠です。しっぽもピンと立って、ふくらんでいることでしょう。
どちらにせよ、その猫が強い恐怖や不安を感じているのは確か。様子を見ながらそっとしておいてあげましょう。
「毛づくろい」は猫のセルフメンタルケア

意外かもしれませんが、「毛づくろい」もネガティブな気持ちのあらわれということがあります。
起きている時間の3割は毛づくろいをしていると言われる猫ですが、身だしなみを整えたり体温調整をするだけでなく、気持ちを落ち着かせるために行うこともあるのです。
というのも、子猫時代にお母さん猫に毛づくろいしてもらったことは、何より安心できた記憶。そのため、自分で毛づくろいを行うことでも、不安を鎮める効果が得られるのだそう。
何か失敗をしたときや叱られたとき、もし熱心に毛づくろいを始めたら、とぼけたりごまかそしたりしようとしているわけではなく、自分を落ち着かせようと焦っている証拠。
こういった、自分や相手の気持ちを落ち着かせたり、相手に「敵意はないよ」と伝えるためのボディランゲージを、“カーミングシグナル”と呼びます。「心を落ち着かせる」=「Calming(カーミング)」ための合図、という意味ですね。
他にあくびや目をそらすといった行動も、カーミングシグナルの一種。もし叱っている最中にこれらの行動が見られたら、ヒートアップするあなたをバカにしているわけではなく、「まあまあ、落ち着こうよ」というメッセージを送っているのかもしれませんよ。
まとめ

ツンデレな猫たちですが、むやみに周囲とケンカしたいわけではありません。むしろお互いの気持ちを尊重して、みんなで平和にすごすために、ボディランゲージやカーミングシグナルを賢く使うのが猫の知恵。
猫を愛する人間としては、その知恵を学んで、身につけたいもの。ぜひ今回紹介したしぐさを意識して、あなたの愛猫の行動をじっくり観察してみてくださいね。
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