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猫が毛玉を吐くのは普通?『毛球症』との見分け方と予防法を解説【獣医師監修】

猫が毛玉を吐くと「これって病気のサイン?」「うちの子は吐かないけど大丈夫?」と心配になる飼い主も多いのではないでしょうか。
毛玉を吐くのは自然な行動である一方で、毛がうまく排出されずに体内にたまると、まれに「毛球症」という病気を引き起こすこともあります。
本記事では、猫が毛玉を吐く理由や病気との見極め方、毛玉を吐かない猫は大丈夫なのか、毛玉が心配なときの予防・ケア方法まで、獣医師の視点でわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
猫が毛玉を吐くのは普通?

猫はよく嘔吐をする動物です。吐く原因は、胃腸炎や感染症などさまざまですが、その中の1つに胃に溜まった毛玉を排出するための嘔吐があります。
猫の毛玉嘔吐の原因
猫は毎日の毛づくろいで多くの毛を飲み込んでいます。飲み込んだ毛は消化されることはなく、多くは便に混ざって排出されます。しかし、時には胃の中で毛玉ができてそのまま吐き出されることもあります。
「毛玉」というと丸いボールを想像されるかもしれませんが、実際には5cm程度の細長くフェルト状のベタついた毛の塊を吐くのが一般的です。
月1〜2回の頻度なら問題なし
飼い主が気になるのは、毛玉を吐いたときに「これは病気なのか、それとも正常なのか」という点でしょう。結論として、毛玉を吐くのが月に1〜2回で、嘔吐の前後も元気があれば心配はいりません。
毛玉を吐かない猫もいる
一方で、「全然毛玉を吐かない」という猫もいます。毛の多くは便に混ざって自然に排出されるため「吐かない=毛がお腹に詰まっている」とは限りません。毛玉を吐くかどうかは猫の体質や腸の働きによっても違いがあります。
また、短毛種や毛づくろいの少ない猫では、毛玉吐きの頻度は少なくなります。
まれに、毛球症を起こすことも

症例数は少ないですが、胃や腸に溜まってしまった毛玉が大きくなりすぎてしまい、吐くことも便として排出できなくなることもあります。この病気は「毛球症」と呼ばれます。
毛球症は以下のような要因があると起こりやすいとされます。
- 長毛種
- 換毛期
- 高齢・病気・水分不足・運動不足・ストレスなどによる消化管の働きの低下
日本の猫は短毛種が多いことから、動物病院で毛球症の猫を診察することはあまりありません。ですが、「毛をいつもよりたくさん飲み込む」「うまく排出できない」という2つの条件が重なることで起こることもあると知っておきましょう。
毛球症の症状
毛球症では以下のような症状が見られます。
- 食欲不振
- 元気消失
- 毛の混ざらない嘔吐
- 繰り返す空えずき
- 便秘、下痢
重症例では腸閉塞を起こすことも
腸閉塞は、異物が腸管に詰まって食べ物や便が通過できなくなる状態です。血流が障害されると腸の一部が壊死する危険もあり、放置すると命に関わることがあります。まれに、毛玉がつながって大きくなってしまったときなど、腸閉塞の原因となることがあります。
腸閉塞は緊急の処置が必要な病気です。「吐き続ける」「食べない」「便が出ない」といった症状が出ている場合は、すぐに受診しましょう。
猫草を与えたほうがいい?

ホームセンターなどで販売されている猫草は、特定の植物を指す名前ではなく、イネ科植物の若葉の総称です。一般的に「猫が草を食べるのは毛玉を吐くため」と言われることが多いですが、実際には次のような理由が考えられています。
- 葉の刺激で嘔吐を促し、毛玉を排出する
- 食物繊維が便通を助け、毛を便と一緒に排出する
- 胃の中の違和感をやわらげる
- 単純に食感を楽しんでいる
猫草を食べたあと吐かない猫もいる
猫草を食べたあと、全ての猫が毛玉を吐くとは限りません。猫草に含まれる食物繊維は、毛を便と一緒に排出しやすくする効果があるため、そのまま毛と一緒に便で出てくることも多いです。
猫草に興味を示すかどうかは猫によって異なり、飼育の必須アイテムではありません。猫草を食べなくても毛は通常の便や嘔吐で自然に排出されており、猫草は栄養面でも必須ではないため、猫が好まない場合は無理に与える必要はないでしょう。
猫草を与えるときの注意点
猫草を与える場合は、以下の点に注意しましょう。
- 食べすぎは、下痢や嘔吐などお腹の調子を崩す原因になる
- 観葉植物を誤食しないよう、食べさせるなら必ず専用の猫草を与える
猫草は「毛玉を吐かせる薬」ではなく、人間でいう嗜好品として考えておきましょう。
毛玉予防のための被毛ケア

猫は自分で毛づくろいをして皮膚の衛生を保っていますが、毛玉予防や皮膚のトラブルに早く気づくためには、飼い主による被毛のケアも大切です。
次のポイントに気をつけて、日々のお手入れをしてあげましょう。
- ブラッシング
- 毛玉ケアフード
- 水分摂取と運動
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ブラッシング
短毛種の猫は週に1〜2回、長毛種は毛の絡まりを防止するためにも毎日ブラッシングをしてあげましょう。換毛期は短毛種でも毎日のブラッシングがおすすめです。抜け毛を減らすことで飲み込む毛の量も減り、毛玉の形成を防げます。
また、猫に定期的なシャンプーは必須ではありません。ただし、皮膚病の治療や、肥満や病気などの理由で自分でグルーミングができないときは皮膚の衛生状態を保つためシャンプーをします。水に濡れるのが嫌いな猫も多いため、動物病院や専門のペットサロンにお願いすることも検討しましょう。
毛玉ケアフード
毛玉ケアフードは、お腹の調子を整え、毛玉の排泄を助けるための食物繊維や、皮膚の健康づくりをサポートするためのビタミンや脂肪酸が多く含まれています。毛玉が気になる猫には与えてみるのもよいでしょう。
便通をよくするには水分をしっかり取らせることも重要です。普段の食事をウエットフードにしたり、複数の飲水器を設置するといった工夫をしてみましょう。
遊びや運動
運動も腸の動きを促進するため、遊びや運動を積極的にさせましょう。体を動かすおもちゃで一緒に遊んだり、キャットタワーを設置したりして、自然に運動量を増やせるといいでしょう。
嘔吐をしたときのチェック項目

毛玉の嘔吐はそれほど心配ないとはいえ、猫が嘔吐をしたら心配になりますよね。
嘔吐をしたら、頻度・吐いた物・その時の猫の状態をメモしておくと、のちに病院で診断を受ける際の助けになります。
受診が必要な嘔吐のサイン
出てきたのが毛玉であっても吐いた後に元気がないときは、単なる毛玉嘔吐ではなく体調不良のサインかもしれません。
嘔吐の受診目安を解説します。
- 吐こうとして苦しそうだが吐けない
- 嘔吐が続く
- 食欲がない、元気がない
- 下痢や便秘を伴う
- 血が混じる
- 水を飲んでも吐く
嘔吐が続くと脱水を起こしやすいので、水分が取れているかをしっかり確認してあげてください。
まとめ
この記事では、猫が毛玉を吐く行動について、生理現象と病気の見極め方、そして日常のケア方法などを解説しました。
猫が毛玉を吐くのは自然な行動であり、月に1〜2回程度で、吐いたあと元気であれば心配はいりません。ただし、吐く回数が多すぎる、吐けずに苦しそうにしている、食欲や元気がない、便秘や下痢をするというような他の体調不良を伴う場合は動物病院を受診しましょう。
毛玉を吐かず、便とともに排出している猫も多く、毛玉の出方は猫の体質や被毛の長さにもよります。ブラッシング、毛玉ケアフード、水分補給、適度な運動などを取り入れて、毛玉がスムーズに排出できるよう気をつけてあげましょう。
【執筆・監修】
獣医師:安家 望美
大学卒業後、公務員の獣医師として家畜防疫関連の機関に入職。家畜の健康管理や伝染病の検査などの業務に従事。育児に専念するため退職し、現在はライターとしてペットや育児に関する記事を執筆中。
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